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横幹連合ニュースレター

<<目次>> No.015, Oct. 2008

巻頭メッセージ

活動紹介

参加学会の横顔

 
知の統合学をめざして
 
*
 
横幹連合副会長
舘 暲
 
◆【特別転載】
 
横幹型基幹(横幹)科学技術とは何か
 
【横幹連合に参加している
 学会をご紹介するコーナー】
 
日本デザイン学会

イベント紹介

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第2回横幹連合シンポジウム

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巻頭メッセージ

知の統合学をめざして

  舘 暲 横幹連合副会長

  東京大学

 横幹連合が誕生したのは2003年4月7日のことで、それから5年余りの歳月が流れた。実は、「鉄腕アトム」の誕生日とされているのが、2003年4月7日なのである。鉄腕アトムは、科学技術の粋を集め、知を統合した結果であり、その誕生の投げかけた様々な問題は、例えば、人間とは何か、あるいは、社会における人間と人工物の関係はいかにあるべきか、といった問いかけをも含んでいる。その範囲は、自然科学に留まらず、広く人文科学や社会科学にも及ぶ。このように、鉄腕アトムは、いわば知の統合の象徴ともいえることから、この日は、まさに「知の統合学」を標榜する「横幹科学」の船出にふさわしい日であった。
 さて、そもそも科学という言葉が、分科学という言葉に由来していることからも明らかなように、我々は、物事を細かく分けて条件を整理して実験し、理論化することで科学技術を発展させてきた。分科なくして進歩はなく、科学技術が進展すればするほど複合領域が増え、新領域もまた生まれる。科学の新領域が新たに加速度的に生まれることは、科学の必然であり、宿命とさえ言えるのである。
 しかし一方では、このように分科し細分化しすぎた科学技術の弊害も、顕著になってきた。あるディシプリンで最適に設計したつもりの仕組みが、グローバルに見ると最適でなかったり、場合によっては最悪になったりする例は、環境問題だけではなく多くの人工物やシステムに既に見受けられる。このまま細分化の一途を辿ったときの結末は、想像を絶して悲惨なものとなるだろう。それを解決するための総合的な学問体系、技術体系が必要であることは明らかである。しかも、それは抽象的な議論ではなく、実学をベースとしたものでなくてはならない。実問題を解決する力のあるもの、でなくてはならないのだ。その学問体系を目指すのが、「知の統合学」であり「横幹科学」である。
 総合的な学問体系として、「横幹科学」は、科学技術を総合し俯瞰的な視座を備えた「新しい構成論と設計論の確立」や「実問題の俯瞰的な解決」を目指してきている。「横幹科学」は、「人文科学、社会科学、自然科学を横断的に俯瞰して、知の統合のための方法論とツールを明確にし、その体系化をはかるとともに、知の統合を実践してゆくための科学」であると言えるのだ。
 従来、知が統合されて、大問題が解決されたり、新しい人工物が創造されたり、あるいは、科学技術の大発見や大発明があったときにも、そのための一般的な知の統合の方法論が語られることは少なく、さらに、そのための具体的なツールも用意されてはいなかった。優れたリーダーや良いメンバーに恵まれたグループ、個人の直感力や才能や感性、あるいは、その組織が伝える徒弟間の直伝などの工夫によって、それらは実現されている。これまで明確にされることのなかった知の統合の方法論を顕在化して、それを誰もが利用可能にしてゆくことが必要である。それは、体で覚えるしかなかった「技能」が、誰もが理屈で習得できる「技術」になった過程の再現とも言えるだろう。そして、その目的が、「問題解決」や「創造」、「意思決定」あるいは「新たな知の発見」であることから、それぞれの目的のための方法論、組織論、具体的な手法などが体系化されなくてはならない。それらをすべて列挙し体系化した「知の統合学ハンドブック」の完成が目標となるのであるが、残念ながら現在は、まだその目次すら明らかになっていない。まだ存在しておらず、従って、オープン・プロブレムとして提起して広く解決を募るべきものと、既に存在するものなどを明確にして、いわば「知の統合学ハンドブック」の「目次」を作りあげることが緊要であり、その目次ができあがった時、知の統合学は学問として、その第一歩を歩み出すとさえ言えるだろう。
 2003年4月7日に鉄腕アトムが誕生することはなかったが、この日に横幹科学が生まれた、と後世の歴史に記されるように、横幹連合に属する多くの方々の知が統合されて、横幹科学がこれから発展してゆくことを願ってやまない。


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