横幹連合ニュースレター
No.017, Apr 2009

<<目次>> 

■巻頭メッセージ■
直接見えないものの重要性と
その認知に向けて
原 辰次
会誌「横幹」編集委員会委員長
東京大学

■活動紹介■
【参加レポート】
●第18回横幹技術フォーラム
●横幹連合・統数所・産総研
合同ワークショップ

■参加学会の横顔■
●研究・技術計画学会

■イベント紹介■
●第20回横幹技術フォーラム

■ご意見・ご感想■
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横幹連合ニュースレター
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横幹連合ニュースレター

No.017 Apr 2009

◆活動紹介

 今回は、2つのイベントをご紹介します。

【講演録】  第18回横幹技術フォーラム(1月7日)
       シリーズ:経営の高度化に向けての知の統合
       「シリーズ第1回 企業パフォーマンスを評価する」
【参加レポート】  横幹連合・統数研・産総研 合同ワークショップ(1月19日)

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第18回横幹技術フォーラム(1月7日)

日時:2009年 1月 7日
会場:学士会館(東京・神田)
講演:白田佳子氏(筑波大学教授,日本学術会議会員), 鈴木督久氏(日経リサーチ取締役)
   角埜恭央氏(東京工科大学教授)
司会・講演録作成:椿広計氏(統計数理研究所リスク解析戦略研究センター、筑波大学大学院ビジネス科学研究科)
プログラム詳細のページはこち ら

【講演録】
椿広計氏(統計数理研究所リスク解析戦略研究センター、筑波大学大学院ビジネス科学研究科)

  技術フォーラムの新しいシリーズでは、企業の経営判断の体制検討に役立てていただくことを願って、今後数回にわたり経営の高度化を支援する工学系・人文社会学系分野の知を紹介し、その統合の道筋についても議論します。第一回では、「危ない会社」の評価方法、日経プリズムにおける「優れた会社」の評価方法、経営評価と経営設計の方法論を通して企業のパフォーマンスをどのように評価するか、について多面的な議論が行われました。【講演録】としまして、「経営の高度化」シリーズの趣旨、講演とパネルの要約を掲載いたしました。特に、日本では世界に先駆けてXBRL言語による財務データの強制開示を推進していますが、実証的財務分析については米国以上に進んだ環境が生成されつつあり、XBRLのタクソノミー(財務報告の電子的雛形)開発に関しては日本が世界を制していることがパネルの中で指摘されるなど、貴重な報告が満載です。

講演録はこち ら
















横幹連合・統数研・産総研 合同ワークショップ(1月19日)

日時:2009年 1月19日
会場:産業技術総合研究所 臨海副都心センター本館(東京・お台場)

【参加レポート】
持丸正明氏(産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究センター)

  横幹連合、統計数理研究所(以下、統数研)と産業技術総合研究所(以下、産総研)の合同ワークショップが、平成21年1月19日の午後、東京お台場にある産総研臨海副都心センター本館で開催された。
今回のワークショップについては、横幹連合の掲げる「知の統合」と、産総研が発刊している「Synthesiology」、さらに統数研の「知識社会のモデリング」というコンセプトが相互に関連すると考えられることから、各団体が問題意識を共有し合いディスカッションをすることで、新たなアプローチが見いだせるのではないか、という共通認識からスタートしたようだ。第1回目ということで、そもそも合流点が見いだせるかどうかも分からなかったことから、ワークショップの開催はほとんど宣伝されず、どちらかといえば関係者を中心とした会合としてセットアップされていた。筆者自身も話題提供者の一人であったのだが開催経緯をほとんど知らないままに講演を引き受け、ここに参加した。しかし、終了時には、こうした試みがとても有意義であったことが参加者全員に認識され、今後も引き続き開催することが合意されている。
参加者数は26名で、当日のタイムテーブルは以下のようであった。

13:00 開会挨拶(木村英紀、横幹連合会長)
13:15 「知の統合とは」(木村英紀、横幹連合会長)
13:45 知の統合の研究事例(鈴木久敏、横幹連合副会長)
14:15 「構成的研究方法論(シンセシオロジー)とは」(小野晃、産総研副理事長)
14:45 シンセシオロジーの研究事例(持丸正明、産総研)
15:15 休憩
15:30 「モデリングとは」(北川源四郎、統計数理研究所長)
16:00 モデリングの研究事例(樋口知之、統計数理研究所副所長)
16:30 総合討論(司会:小林直人、産総研理事)
17:50 総括・閉会挨拶(北川源四郎、統計数理研究所長)


 まず、木村会長からワークショップ開催に至る経緯と趣旨についてのご挨拶があった後、木村会長ご自身と鈴木副会長から、横幹連合の掲げる「分野横断的な研究領域」とそれを通じた「知の統合」についての講演が行われた。統計、最適化、制御などの領域フリー型の研究分野が、従来の研究分野を統合する横断型分野として機能することが重要である、という趣旨の講演であった。
 続いて、産総研の小野副理事長より、産総研が新たに刊行した学術雑誌「Synthesiology」の狙いについての講演があった。その中で小野氏は、対象を要素に分解して解明、理解して行こうとする還元論的な自然科学だけでは、新しい科学技術が基礎研究を経て産業化され、実用に至るまでの間にある「悪夢の時代」または「死の谷」と呼ばれる「研究費不足から研究が途切れる期間」をどう乗り越えるかについての解決ができないことなどを論じた。このため、要素技術を構成して組み上げていく科学的手法=構成的研究方法を体系化しようという思想から、同雑誌が刊行されている。小野氏は、Journalという手段でさまざまな構成的手法の適用事例を蓄積していくことが、そうした体系化を実現する試みであることを強調しておられた。





















 続いて、筆者が報告をした。「Synthesiology」の第1巻第1号には筆者も論文を投稿しているが、このワークショップではそこに紹介した事例から、顧客の顔の寸法を測り、その場で即座に「形態的・感性的」に適合するメガネフレームを選択、推奨する技術について、その要素技術をいかに開発し統合したかについて報告をした。
 引き続き、統数研の北川所長より「知識社会におけるモデリング」についての講演が行われた。北川氏は、計算科学時代になって理論科学がシミュレーション計算科学に発展したように、実験科学は実社会での大規模データをモデル化するデータ中心科学に発展していくことについて講演された。そこでは、大規模データをベイズモデルによって定式化し、予測可能な知識にすることがデータ中心科学の基盤となる、と論じた。そのあとの樋口副所長の講演も、北川所長の趣旨を具体的に裏付ける事例報告で、対象に関する科学的知識に基づく弱い仮定から大規模データのベイズモデルに基づく予測技術が、気象、集客、小売など幅広い分野で利用可能であることを紹介された。
 合同ワークショップの趣旨の通り、従来の科学技術の分野(discipline)では解決しきれない問題を、横断的基幹分野で、あるいは構成論的手法で、もしくは大規模データのベイズモデルとして取り組んでいこうとしているそれぞれの組織の問題意識とアプローチには、共通する部分が多いことを感じた。総合討論においても、「知」とはなにか、「学術分野(discipline)」の意義はなんであるかについて、活発な議論が行われていた。
 今回の取り組みが非常に有意義であったことから、次回に期待が高まるワークショップだったと言えるだろう。
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