公開シンポジウム「子どもの毒性学:子供の高次脳機能への化学物質曝露影響の把握に関わる、臨床、応用および基礎科学の現状と展望」
種々の統計データにより、自閉スペクトラム症(ASD)の症例数が増加し、逆に統合失調症(SCZ)の新規症例は減少していることが示されています。自閉症スペクトラム症は、連続した虹色の様に少しずつ違った症状を呈する症例の集合として自閉症を広く捉える考え方ですが、実は、SCZの症例もスペクトラム症と言ってよいほど様々な症状を呈します。若いSCZ症例にASDが合併している症例も報告され、ASDとSCZには関連性がある事が指摘されています。近年、遺伝子レベルでもASDとSCZの関連性に関する研究が進んでいます。ASDと関連が深いAuts2という遺伝子が、ASDだけでなく、脳の発達に重要な遺伝子として注目されており、この遺伝子がSCZの一部の症例に関係することも報告されています。Auts2遺伝子を改変したマウスがASD症例の症状と関連した異常行動を示すこと、さらに、アセフェートなどの神経を標的とする化学物質をマウスに与えた時に、Auts2遺伝子の発現が影響され、行動異常が起こるというデータも得られております。
以上の事を総合すると、ASD症例の増加とSCZ症例の減少という状況は、「ASDは3歳ごろまでに診断されるのに対して、SCZは20歳ごろに初診となることが多いので、ASD症例のなかに従来なら20歳になってSCZとして診断されたであろう症例が含まれていて、3歳時からの種々の手当の成果としてSCZの新規症例数が減少した」のではないか、という可能性が出てきます。これと同時に、「それでもASD症例数とSCZ症例数の総和」は増加しているかという問題が生じます。化学物質の環境曝露がASD増加に寄与している可能性を示唆する情報も蓄積していますが、この可能性はやはり高いのか、それとも遺伝的要因と診断基準の変遷と、教育現場などの社会的な要因などのみで説明がつくのか、あるいは、両方なのかという問題でもあります。
これらの問題は学際的学問である「毒性学」の立場からとても重要な意味を持っています。そこで、本企画の契機の一つとなった文科省の統計、 ASDとSCZの診断基準等の変遷と症例数の関係、Auts2遺伝子など分子生物学的なASD及びSCZの解析の現状と展望、化学物質の曝露を含む環境要因の影響(エピジェネティクス効果を含む)、等について、それぞれの研究分野の専門家によるシンポジウムを企画いたしました。多数のご参加をお待ちいたしております。
日時 | 2022/2/19(土)13:00~17:20 |
---|---|
開催地 | オンライン開催 |
対象 | どなたでも参加いただけます。 |
定員 | なし |
プログラム | 13:00 開会挨拶 菅野純(日本学術会議連携会員・国立医薬品食品衛生研究所客員研究員・名誉職員) 講演 座長 姫野誠一郎(日本学術会議連携会員・昭和大学薬学部客員教授) 13:10「出生体重と子どもの神経発達の関係」 市川剛(獨協医科大学・医学部講師) 抄録(PDF形式:248KB) 13:40「自閉スペクトラム症の環境要因」 松﨑秀夫(福井大学子どものこころの発達研究センター教授) 抄録(PDF形式:227KB) 14:10「自閉症と統合失調症の疫学」 土屋賢治(浜松医科大学・子どものこころの発達研究センター特任教授) 抄録(PDF形式:231KB) 休憩14:40~14:50 14:50「ゲノム解析に基づいたASD/SCZの研究」 尾崎紀夫(日本学術会議会員・第二部幹事 名古屋大学大学院・医学系研究科教授) 抄録(PDF形式:281KB) 15:20「アセフェート経口投与によるマウスの情動認知行動影響」 種村健太郎(東北大学大学院・農学研究科教授) 抄録(PDF形式:229KB) 15:50「AUTS2遺伝子と脳神経発達、そして精神疾患」 星野幹雄(国立精神・神経医療研究センター神経研究所・病態生化学研究部部長) 抄録(PDF形式:228KB) 休憩16:20~16:30 16:30~17:10 パネルディスカッション 座長:菅野純 パネリスト: 関野祐子(日本学術会議連携会員・東京大学大学院薬学系研究科ヒト細胞創薬学寄付講座特任教授) 姫野誠一郎 17:10~17:20 閉会の辞 平井みどり(日本学術会議連携会員・神戸大学名誉教授) |
申込み | 以下のページのリンク先よりお申込みください。 参加登録ページへのリンク |
事前登録期間 | 当日まで |
問合せ | 「子供の毒性学」シンポジウム事務局 E-mail:scj-tox*vetmed.hokudai.ac.jp(*を@に変更) |
備考 | 主 催:日本学術会議薬学委員会・食料科学委員会・基礎医学委員会合同毒性学分科会 共 催:日本毒性学会 後 援:日本生命科学アカデミー |