会長 椿 広計

 安岡善文前会長の後を引き継いで、第7代の横幹連合会長に選任されました。歴代会長の成果を引き継ぐとともに、横幹連合設立時に掲げられた社会課題解決のための知の統合、そしてそのための人材育成といった高い理念を改めて再評価するとともに、その実践を通じて横幹連合の発展に努めていく所存でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 歴史的に社会や産業の継続的発展は、必要な学術や現場の知の融合によって支えられてきました。それを繋げる戦略企画的人材が産業界でも行政でも、あるいは工学系研究プロジェクトの中でも、多く輩出されていたと考えます。
 横幹連合が目指すところは、知の融合やそれに必要な人材の輩出を体系化することです。融合知や総合知に一歩踏み込んで「知を統合する」プロセスを創り、社会に適用することが、2003年の横幹連合発足時に提起された「コトつくり」と考えます。
私たちが目指すべき知の統合とその実装とは、近未来社会を人間や人間を活かす環境をより良いものにするとともに、それによって取り残される人間が無いように配慮された社会と環境とを構築することではないでしょうか?
 利害の反する達洋なステークホルダーが社会のあるすべき姿を明らかにし、合意解を形成する実装プロセスを明らかにするは、社会科学・人文学・マネジメントサイエンスを中心とした意味知が肝要です。効果的実装に必要な科学的方法論を明らかにするには、計測やロボティックス・最適化といった使用知が必要です。その効果性をモデルとして表現するには人工知能の基盤ともなる情報学、シミュレーション、データのサイエンスの知がなければなりません。このような知を横幹連合は横幹知と呼んできました。
 しかし、社会や産業を構成するシステムの知は、縦型学問と呼ばれるものの中にあり、産業界等の現場に宿る知の多くは、縦型の知として専門家や専門家が使うソフトウェアの中に存していると考えます。私は、この知を縦深知と呼びたいのです。深すぎる知の中には、暗黙知と呼ばれるものもあるはずです。
学会を会員とする横幹連合の発足以来の20年の外形的課題は、加盟学会の個々の会員に活動の成果が見えていないことでした。横幹連合の知が、加盟学会の会員の知に繋がらないという悩み事です。これは、加盟学会との連携強化を通じて改善しなければなりません。
 しかし、より横幹連合にとって重要なのは縦深知と横幹知との統合を推進するプロジェクトの形成と考えます。横幹知は真空の中では生きられない、縦深知との活動の中で進化・発展する知と考えるからです。
人工知能が急速に人間社会を変えつつある現在、異分野を俯瞰して何をどのようになすべきかを明らかにし専門家集団の知の統合ができる人財を高等教育機関は目指さなければなりません。また、それを体得した専門家が、人工知能に何をなすべきかを教育する、擬似人材育成の責任者となるのだと考えます。
 こういったことを横幹連合で考えてゆきたいと思いますので、多くの方々のご支援・ご協力を賜れば幸甚です。