品質機能展開

概要

品質機能展開(QFD)は、新製品や新サービスの開発の際、品質の高い製品・サービス構築するために、開発段階から確実な品質保証を可能にするための方法論である。1966年にブリヂストンタイヤ久留米工場でタイヤの製品品質保証項目と製造工程の管理項目とを結び付ける手法として用いられ、その後1970年代に入って三菱重工業の神戸造船所で、顧客要求と設計品質を関連付ける手法として精錬され、1978年に水野滋、赤尾洋二により体系化された方法論である。
品質機能展開は顧客のニーズや期待を整理しそれを確実に製品やサービスの開発につなげるための手法であり、品質を大きく向上させるための方法論である。 1980年代に入り米国の自動車業界でも活発に導入され、応用、進化、発展されながら世界的に広まっており、現在では国内外を問わず多くの企業や組織で使用されている。また、ほぼ毎年世界各所で、QFDに関するセミナーやシンポジウムが開催され、QFDの普及や進展、研究課題等に関して議論がなされている。

コトつくりにおける訴求点

主な訴求点は、以下4点である。
(1) 顧客の要求を確実に満たせるような製品やサービスの設計
QFDを実施することにより、顧客の要求とそれを実現するための設計との関係を明確にすることができ、確実に製品やサービスに要求された品質を作り込むことができる。また、顧客の要求の上位概念である経験価値やユーザーエクスペリエンス(UX)を想定した製品企画にもQFDが活用できる。

(2) 確実な品質保証体制の構築
QFDを実施することにより、顧客ニーズとそれを実現するための設計との関係を明確化でき、設計品質が設定しやすくなり設計の意図や品質情報が生産現場 に確実に伝達され、初期品質トラブルを低減することができる。その結果として 高効率で的確な品質保証が可能になる。

(3) 類似製品の早期立ち上げ
類似した新しい製品やサービスを設計する際に、ゼロからQFDを実践するのではなく、共通部分はそのまま援用し、相違部分を明らかにして、その部分のみを重点的に検討することにより、過去の経験を活かし、検討漏れを防げるだけでなく、設計開発時間の短縮にも貢献できる。

(4) QFDの進展と国際展開
QFDは2003年にJISQ9025また2015年にISO163551として、それぞれ制定
された。今や世界各国で活用されており、現在も発展し続けている。現在、日本や USA、ドイツ、中国など世界各所で品質機能展開に関するシンポジウムやセミナーが開催されている。日本で開催されている品質機能展開シンポジウムは1991年に第1回が開催され、以来ほぼ毎年開催され、2020年で第26回を数える。また、品質機能展開国際シンポジウム(ISQFD : International Symposium on Quality Function Deployment)は1995年に日本で第1回が開催されて以来、ほぼ毎年開催されている。第26回ISQFDは2021年にドイツで開催予定である。

参考URL

なし

 推薦論文

品質機能展開

 推薦学会

   日本品質管理学会

講評

QFDは機能と品質項目の関連を、表などを用いてまとめることで、設計要件を的確に整理する手法と理解できる。実務の中で生まれた手法であり、いまや設計現場で当たり前のように用いられている。手法の原理は比較的シンプルであるが、シンプルであるがゆえに世の中に広まったとも考えられ、規範力や意味力という点において極めて高く評価できる。コトつくりという点においては、単に開発現場で用いるだけではなく、水野氏や赤尾氏による体系化のような「学術界との連携」が功を奏したと考えられ、時に産学連携がコトつくりに好影響をもたらすことを示す好例といえよう。

コトつくりに特に寄与した要因

  1. 「現場で生じている問題」に着目する姿勢
  2. 学術界との連携による理論・体系化の推進
  3. タグチメソッドなど、他手法との連携・融合

前の記事

粒子フィルタ

次の記事

タグチメソッド