ジャストインタイム生産システム
概要
20世紀初頭、米 フォード社 はコンベアを使った流れ作業によるT型フォードの「一車種大量生産方式」を完成させた。一方で、この計画的量産方式に対して 、多品種少量生産に対応した生産方式がジャストインタイム生産システムである。トヨタ自動車株式会社を中心に長年開発されてきたこの生産システムは「ジャストインタイム」と「自働化」を二本柱として、かんばん、改善、あんどんなどの手段、およびムダ・ムラ・ムリをなくすことを原則に、製品需要を起点にした後工程引き取りの流れを、在庫および工程間物流の面から作り上げるものである。
コトつくりにおける訴求点
ロットを大きくして段取り替えを少なくし、 計画的に大量生産することを目指してコスト削減を図ってきたそれまでの自動車生産に対して、 ジャストインタイム生産システム(以下「JIT生産システム」という)はその逆をいくものである。この生産システムは、ロットを小さく 、かつ段取り替えを速やかにすることで在庫を減らし、コスト削減と需要への迅速な対応の両立を目指している。これは、現代の価値観の多様化に沿った、多品種少量生産に対応できる弾力的な生産システムであり、ムダを排除して必要数だけつくるという思想は 、地球環境への配慮にもつながり、企業に求められる社会的責任を果たすことに通じる。
JIT生産システム を構成するものは、必要なものを、必要なときに、必要な量だけつくるという「ジャストインタイム」の思想 、機械の故障や品質不良が発生すると自動的に機械が停止する「自働化」の仕組み、モノと情報を一体化する機能を併せ持つ「かんばん」、つくり過ぎによるムダを防ぐための仕組みとして製品需要を起点にした「後工程引き取り」、生産現場に掲げられるラインストップ表示板である「あんどん」、生産の時期や量のバラツキを小さくする「生産の平準化」、スムーズな段取り替えに対応するための作業者の「多能工化」、問題点を発見し解決する取り組みの「改善」、真因を突き止めるために繰り返す質問「なぜ」、などがあり、これらは世界的にも研究され、リーン(Lean)生産方式やシックスシグマ(6σ)など、アメリカをはじめとする各国の産業に影響を及ぼしている。また、その考え方や手法は、自動車生産にとどまらず、製造業、サービス業、官公庁など、幅広い分野で活用されており、応用範囲の広さを物語っている。わが国で生まれ世界で導入されているJIT生産システムの貢献は、非常に大きいものと考えられる。
参考URL
- なし
推薦論文
推薦学会
日本経営システム学会
講評
ジャストインタイム生産システムの特徴を一言で表すならば「下流工程から生産量調整を行う生産システム」と言え、それまでに考えられていた大量生産ラインの設計とは真逆の発想によって構築されたシステムである。言うは易く行うは難しの典型であり、これを実現するためには「かんばん」や「アンドン」「U字生産ライン」など、様々な手法を複合的に活用しなければならない。コトつくりとしてこれを見た場合、やはり世界的に成功したトヨタ自動車株式会社がこの中心にいたことが大きいであろう。また、多能工に代表されるような「集団全体の最適化」を念頭に企業活動が行われる日本の文化も、このシステム成立に対し、大きく寄与したことがうかがえる。
コトつくりに特に寄与した要因
- 現場を大事にする企業姿勢
- 当たり前を疑う姿勢
- 全体最適をベースに企業活動を行うという文化