林の数量化
概要
林の数量化は、林知己夫氏により1950年代頃に開発され、分類尺度や順序尺度で計測されたデータを量的尺度に変換する基本的な多変量解析手法体系であり、わが国産官学の社会分析活動全般に定着している。その理論は、日本発の多変量データ解析の代表的方法論になると共に、データ科学における国際社会に対する先駆け的貢献ともなった。
コトつくりにおける訴求点
コトつくりの観点からみると、観測変数からより多くの知識価値を抽出する「観測変数の数量化プロセス」という思想を提唱したことは大きな意義を持つ。実践面では、人文科学・社会科学系をはじめとする多くの実証研究や社会調査に現れる質的情報の要約と、グラフイカルな可視化に基づく解釈に必要な基幹的行動計量科学技法として広く活用されてきた。数量化Ⅰ類、Ⅱ類などの命名により手法をわかりやすく分類し、統計を専門としない人でも扱いやすくした功績は非常に社会的価値がある。さらに国際化の面では、数量化Ⅲ類は、多重対応分析、双対尺度法の名で海外でもその変法が少し遅れてフランス等でも提唱されることとなり、1990年代に「データの科学」という分野を勃興させるきっかけとなった。
参考URL
推薦論文
推薦学会
応用統計学会
講評
林の数量化は、それまで扱いにくいとされていた質的データを量的データに変換することにより、伝統的な統計手法の適用を可能にした。これにより扱えるデータセットの範囲が格段に広がり、人文科学・社会科学系を含む社会的課題解決のためのデータ科学の貢献をより大きなものにした。
さらに、一見わかりにくい複雑な数量化手法を、数量化Ⅰ類、Ⅱ類などと命名、整理したことで、分析者の理解を助け、データの種類、構造、目的に合わせて客観的に利用しやすくした。データの傾向や関係性を可視化し分析結果を視覚的に把握できるようにしたことは、結果の解釈性を大きく向上させた。
様々な観測データを数量に置き換え、解析性や解釈性を高め、本質をあぶり出すプロセスは林知己夫により生み出され、数量化というコトつくりがその後の調査研究の発展に大いに貢献したことは言うまでもない。
コトつくりに特に寄与した要因
1.数量化というコトつくり
2.質的データを扱う調査、研究の発展に寄与
3.数量化Ⅰ類、Ⅱ類などの命名による体系化と普及促進