自律分散情報制御システム

概要

自律分散情報制御システムは、システムの各要素(ノード)が、自律性、分散性、協調性を保ちながら目的を達成しようとするシステムである。システムの規模が大きくなるにつれ、フォールトトレランス性、段階的拡張性、稼働中の保守性の重要度が高まってくる。サブシステムの部分的な停止を許容できない中央集権型システムに対して自律分散コンセプトに基づく当該システムは、柔軟性が大きく保たれるシステムである。鉄道運行管理システムや鉄鋼製造管理システム等,世界の様々な社会・産業分野で多数の適用実績があり、大規模情報制御システムにおける代表的アーキテクチャの一つとして活用されている。

コトつくりにおける訴求点

従来の中央集権型システムでは、システムの拡張、修正時にシステム停止を余儀なくされたが、無停止での運用・連携を可能にした。システムが永続的に変化・発展し続けることを前提とした分散型の情報連携アーキテクチャであり、着想後5 0年を経過するも情報通信技術の大変革の中でもこのアーキテクチャは不変である。当該システムはその研究者らによりIEEEの国際会議 IEEE International Symposium on Autonomous Decentralized Systems (ISADS)が立ち上げられ、ISO、IECの国際標準となっている。日本発で世界の基盤情報システムに貢献するシステムアーキテクチャである。

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推薦論文

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講評

社会や産業の基盤がコンピュータシステムで運用され制御されるようになると、システムの信頼性に依存する度合いが格段に高まる。20世紀後半以降、大規模化、複雑化するシステムは、その停止リスクからシステムを守る必要性に迫られていた。自律分散情報制御システムの登場はその問題解決に大きく寄与するものである。この基礎となる自律分散コンセプトは、生物を範として生まれたものである。これは、「生体は活動しつつ成長できる」、「生体は器官レベルでは異なるものの細胞単位で見ると均質な細胞からなる」、「生体は免疫システムによって個々の細胞が生体に障害を引き起こすような細菌を排除する仕組みを持っている」、「生物は遺伝子により進化する」といった生体全体の性質をシステムの世界に取り込んでいる。分野横断的発想から生まれたこのシステムコンセプトは、制御技術を信頼あるものにし、長きにわたり社会基盤を支えている。
発想の転換、問題解決力、社会的インパクトから、自律分散情報制御システムは優れたコトつくりの事例であるといえる。

コトつくりに特に寄与した要因

1.柔軟かつ強靭なシステムを創出するための基本コンセプト
2.生物、生体の性質を範とした分野横断的発想
3.システムに依存する現代社会の信頼性向上に貢献

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