グッドデザイン賞
概要
グッドデザイン賞は、国際的な意匠盗用問題に端を発し、オリジナル商品奨励制度として設立されたデザイン顕彰制度で、1957年に始まった。当初は行政主導による「グッドデザイン商品選定制度」であったが、応募件数の減少などにより制度存続について議論が重ねられ、その結果、運営母体の民営化、「グッドデザイン賞」への名称変更、目的・制度の大幅見直しが行われた。その後も様々な有識者・関係者との協議を重ねつつ少しずつ様相を変え存続し、現在はアジアを中心に世界的に注目度も高い賞に発展している。
コトつくりにおける訴求点
グッドデザイン賞そのものはあくまで手段、すなわちモノであり、コトではない。コトつくりの観点からは、約60余年にわたって継続されているこの顕彰制度の運営に注目すべき点がある。デザイン賞に限らず、多くの賞は行為の形骸化や財政問題、信ぴょう性の問題など、様々な要因から長年にわたり継続性を担保することが難しく、終了した賞は枚挙にいとまがない。グッドデザイン賞にあっては設立当初より定期的に審査基準、対象領域などにおいて細かなアップデートが行われてきた。一方でこのアップデートは事務職員・審査委員など、関係者が入れ替わりながらこれを実施することで、各々がグッドデザイン賞を他人事ではなく「自分事」として取り組む文化形成がなされてきた点も見逃せない。顕彰制度に対する関与意識向上が賞の存続に大きな効果を発揮してきたものと推察される。さらにマンネリ化を防ぐため、「デザインをテーマとした各種イベントの実施」、「制度改訂に向けた非公式討論会の開催」、「賞に関連した各種事業展開」などの施策を取り、賞に関与する者を増やし社会的認知度を高める戦略を取ってきた。実施母体である日本デザイン振興会の技術協力のもと、アジア地域でグッドデザイン賞をひな形としたデザイン賞が相次いで創設されていることは、規範としての価値を十分に備えている証である。
参考URL
- グッドデザイン賞公式サイト
(2024年8月31日閲覧) - 公益財団法人日本デザイン振興会
(2024年8月31日閲覧)
推薦論文
推薦学会
日本デザイン学会
講評
顕彰制度の継続的運営は困難を伴うことがある。その中でグッドデザイン賞は長期にわたり運営がなされ、今なお新鮮な輝きを放ち続ける特筆すべき制度である。設立時から「商品と生活の質向上にむけた意識改革を主眼とする『グッドデザイン運動』」を志向している点には変わりはないが、活動の盛衰を経て、運営母体、プロセス、体制、広報などの改善がなされ、とりわけデザインに対する社会の意識変容を促した点は注目に値する。当初、デザインは形や情報の意匠として捉えられることが多かったが、ビジネスモデルやイベント活動などにも対象領域を拡大し、その認識が徐々に社会に浸透してきている。このような意識変容を実現することはコトつくりといえ、この顕彰制度が社会のデザインに対する意識変化に寄与したものと推察する。近年アジア地域にデザイン賞が創設される際、日本デザイン振興会に技術協力依頼が来ることが多いようである。グッドデザイン賞に関するこれらの点は、優れたコトつくりであるといえる。
コトつくりに特に寄与した要因
1.「自分事」全員参加による顕彰制度の魅力創出
2.コトつくりの観点から社会のデザインに対する意識変容を実現
3.アジア諸国の規範となるグッドデザイン賞