QRコード
概要
QRコードは格子状に白と黒のセルを配置して情報を表現するマトリックス型2次元コードである。開発を当初から直接担当されてきた株式会社デンソーウェーブの原昌宏氏によると、その名称は、最大の特徴である高速読み取りを表す「Quick Response」から命名されたとのことである。QRコードは、それまでの1次元バーコードの大容量化のニーズから生まれ、厳しい現場環境での読み取りやすさ、カメラ付き携帯電話・スマートフォンの普及などから、誰もが使える身近なコードとなった。さらに特許戦略が奏功し世界中に広まると、カメラ撮影を起点にした情報へのアクセススタイル、店舗での決済方式、改札・会場への入場形態をはじめとする、新たな行動スタイルを創出した。
コトつくりにおける訴求点
QRコードの技術的優位性として、「全方向高速読み取り」、「汚れ・破損に強い」、「コード歪みに強い」といったことがあげられる。さらに、初期バージョン以降、小型化、大容量化、セキュリティ強化、デザイン性向上などの進化を続け、他の追随を許していない。ユーザーニーズによる改良を重ね、使いやすさを追求し、ブランド力の維持・強化を図っている。
最初の立ち上げフェーズでは,ユーザー獲得に向けてまず自動車、電機・電子、流通業界などで実績を作り、JIS規格,ISO規格を取得した。次にQRコードのユーザーには特許権利をオープンにして利用を促進し、模倣品や不正用途に対しては特許権利を行使して、市場からの排除を行った。
普及後は、決済のキャッシュレス化,クーポンの利用拡大,改札・入場の迅速化,非接触による感染症対策など、社会の様々な場面で用いられ、人々の行動スタイル変容させた。
参考URL
- 株式会社デンソーウェーブHP:QRコード開発
(2024年8月31日閲覧) - 特許庁HP:「QRコード」(株)デンソーウェーブ
(2024年8月31日閲覧)
推薦論文
推薦学会
日本経営システム学会
講評
3次元空間という物理環境,自然環境に左右されやすい場面での使用に耐え得るように,開発者は現場の視点からコードを発案し改良を重ねてきた。「現地現物を大事にする」ものづくり企業であるからこその視点である。特許のオープンクローズ戦略は、日本発の技術を世界へ普及させた成功事例として大いに学ぶべき点である。QRコードは、シンプルで、身近で、多くの場面で使える汎用性を持ち、これまで長年変わらなかった社会システムを変えつつある。人々の行動スタイルを変えることは紛れもなくコトつくりであり、2次元コードの技術面、特許戦略といった面でのコトつくりも踏まえると、QRコードは日本発の世界に通じる優れたコトつくりであるといえる。
コトつくりに特に寄与した要因
1.Quick Responseを可能にした優れた2次元コード
2.特許のオープンクローズ戦略
3.社会への浸透と新たな行動スタイルの創出