横幹連合について

会長あいさつ

会長 鈴木 久敏

 吉川弘之先生、木村英紀先生、出口光一郎先生という3人の歴代会長に引き続き、 第4代の横断型基幹科学技術研究団体連合(略称、横幹連合)会長をお引き受けすることなりました。歴代会長の成果を引き継ぎ、発展させることに努めていく所存でございます。

 ご存知のように横幹連合は、特定の適用領域に依存せず分野横断的に適用可能な汎用的な科学技術を専門とする文理に跨る40弱の学会の連合体で、 分野横断的な科学技術の普及とそれらの適用により電気、機械、材料、情報など様々な領域の知識を統合させ、現代社会で生じ、個別領域の知のみでは解決できない困難な課題の解決を目指しています。

 2003年の創立以来、最初の10年間は「横断型基幹科学技術(以下『横幹技術』と略)とは何か」、「横幹技術はなぜ必要か」など、横幹技術の定義を定めることに活動の中心があり、 その中で「分野横断知」の必要性、ものづくりから「コトつくり」への転換、「知の統合」による価値創造など、その時代と社会が必要する科学技術の発展方向を指し示すキーワードをいち早く打ち出してきました。 これらのキーワードは国の科学技術基本計画や企業の製品開発戦略の理念として取り入れられるなど、社会に対して一定の影響力を与えてきました。ところが残念ながら、これら魅力的なキーワードの認知に比べて、 横幹連合の存在それ自体やこれらの言葉が横幹連合の活動の中で生まれてきたことはあまり知られることなく、横幹連合の組織自体が大きく発展することはありませんでした。その原因の一つは、 横幹連合に集っている学会が持つ科学技術それ自身が消費者に直接見えるモノの形として現れ難いので、その技術を認識し難いという、横幹技術の特性に因るものである点かと思います。

 横幹連合が創立10周年を迎えた際に制定した「横幹中長期ビジョン2014」では、最初の10年を横幹科学技術の「認知」の期間と総括し、そして次の10年を「実践」の期間と位置付けました。 横幹連合とその会員学会が、知の統合を推進するための知識体系である「横幹技術」を具体的に見せるか、 「横幹技術」を適用したことで生まれる価値(あるいは成果物)を人々に指し示すことができるようにすることが重要だと思います。前者についてはすでに横幹技術の知識体系を作り、 教科書として纏めようとする調査研究会が立ち上がっています。後者についても、会員学会の計測自動制御学会が中心となって、 横幹技術が第5期科学技術基本計画で提示されている超スマート社会(Society 5.0)の実現に不可欠な科学技術として位置付けようと、動き始めてくれています。それらの成果に期待したいと思います。

一方、新会長として早急に手を付けなければいけないと感じている横幹連合自体の課題は、
 @横幹連合と会員学会との関係、特に会員学会にとっての横幹連合の存在価値を高めること
 A横幹技術協議会を始め、日本の産業界にとって横幹連合の存在価値を高めること
の2点だと感じています。前者については、いずれの会員学会も少子化や日本経済の低迷から、会員数、賛助会員数の減少という共通課題を抱え、 財務上の理由から横幹連合からの退会を検討せざるを得ない学会も少なからずあるという事実です。これら会員学会の抱える課題に向き合い、共に発展する方向を探る必要があると思います。 そのためまずは会員学会と忌憚のない意見交換が必要と感じています。後者の産業界との関係も同様です。 これまで横幹連合の会員学会が持つ個別専門知識を紹介するセミナーや特定の企業課題を解決するのに必要な知識を持つ会員学会の研究者・専門家の紹介などは行ってきましたが、 社会が高度化、複雑化するに連れ、産業界の課題も一社の中だけで完結せず、複数の企業が連携しかつ複数分野の知識を統合することでしか解決できないシステム構築型の社会的課題が増えており、 そのような課題を横幹連合として産業界とが一緒になって引き受け、解決に向けて歩んでいくことが必要になってきていると思います。

 日本社会にとっても、文理に跨る40近い会員学会並びに会員学会に集う研究者・専門家のネットワークがますます重要な存在になっていくものと確信しています。