No.062 Aug 2020
TOPICS
1) 第11回横幹連合コンファレンスは、2020年10月8日(木) ‐ 9日(金)に 「オンライン」にて開催されます。大会テーマは、「サステナブル・イノベーションに向けて -横幹知による深化と創発-」です。開催案内は、こちら をご覧ください。
今回の Columnでは 「大会テーマ」の解説と決定にいたる経緯を、実行委員長の宮里義彦先生( 統計数理研究所 )よりお話頂きました。
2) 防災学術連携体では 「withコロナ時代の 複合災害への備え」について、お知らせと報告を告知しております。
新型コロナウィルスの感染について予断を許さない状況が続いています。 この感染症への対策を進めると同時に、例年起きている自然災害の発生による複合災害( コロナ感染などへの医療対応と自然災害が同時に起きた場合の被害の拡大 )にも警戒が必要です。
防災学術連携体からの発表は、こちらをご覧ください。
COLUMN
第11回横幹連合コンファレンスの お知らせ
執筆・構成 武田博直 ( 横幹ニュースレター編集室長、日本バーチャルリアリティ学会 )
日時:2020年10月8‐9日(事前参加申し込みは、9月30日までの予定)
会場:統計数理研究所(オンライン開催)
主催:横幹連合
開催案内は、こちら
本 Columnでは、第11回横幹連合コンファレンス 実行委員長の 宮里義彦先生( 統計数理研究所教授、制御理論 )から 大会テーマのねらいを ご紹介頂こうと考えました。 ところで、本題に入る前に 今回の大会テーマとの関連で、文部科学省の進める「第5期科学技術基本計画」(2016年度~2020年度)や 「第6期科学技術基本計画」( 策定中 )についての現状と、更に、前回第10回の大会テーマに選ばれたSDGs( 持続可能な開発目標 )など国際協調の取り組みについて、最初に 簡単に整理しておこうと思います。各概要については、以下の URL.をご参照ください。
〇 「第5期科学技術基本計画」
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5gaiyo.pdf
第5期計画では、Society 5.0を具体的に実装しつつ 全取組が進展しているという。( Society 5.0は、未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組としての世界に先駆けた『超スマート社会』の実現構想である。 )
〇 「第6期科学技術基本計画」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu28/houkoku/1418594.htm (概要)
そして、第6期計画においては、以下の内容が( 現時点で )重視されているようだ。
「産学官が有する研究施設・設備・機器は、あらゆる科学技術 イノベーション活動の原動力となる重要なインフラであり、科学技術が広く社会に貢献する上で不可欠なもの、という基本認識が 改めて示されようとしているという。しかし、そもそも現行の科学技術基本法に 『イノベーションの定義』は書かれていないそうだ。また、基本法の第1条では、『科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)の振興に関する施策の基本』である、と、わざわざ人文科学を除外する科学技術基本法の性格づけが行なわれているという。そうした姿勢は、今日の( 例えば )AI研究や生命科学において、人間社会における科学技術の存在意義を人文科学の援用を含めて問うことが今や常識となっている科学技術の水準を正しく反映していないとも言えるのではないか。つまり、現行の科学技術基本法について、『(人文科学を含めた)科技振興とイノベーション活性化のための基本法』としての見直しの方向性が示されようとしているようだ。」 (文責、本誌編集室。記載した内容は、編集室の調べに基づく。)
〇 「持続可能な開発目標 SDGs エス・ディー・ジーズとは」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html#:~:text=%E6%8C%81%E7%B6%9A%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%81%AA%E9%96%8B%E7%99%BA%E7%9B%AE%E6%A8%99%EF%BC%88SDGs%EF%BC%89%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%8C2001,%E3%82%92%E7%9B%AE%E6%8C%87%E3%81%99%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%9B%AE%E6%A8%99%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
更に、2025年度までの第6期科学技術基本計画の5年間は、国際協調のSDGsの目標達成のための節目に当たると想定されていたという。しかし、世界的なコロナ禍が その目標の実現に、ある意味では追い風となり、実装という観点からは障害となって立ちふさがることになった。
(なお、横幹ニュースレター No.059 Nov 2019 のColumn に 「SDGs = 持続可能な開発目標 と 横幹科学技術 ‐ 2030年までの工程 」についての解説を載せました。ご参照頂ければ幸甚です。)
ところで、目標達成を2030年に想定していたSDGsに関して、IIASAという非政府ベースの国際研究所や 国際連合のSDSNという科学技術者による支援団体などから「TWI 2050(The World in 2050) 」 という研究イニシアティブ(研究構想)が提唱されています。TWI 2050は、2050年に想定される「SDGsの目標が達成された社会」をイメージして、現状で欠けているものは何だろうか、また、例えば、エネルギーと安定した気候、食糧安全保障と生態系などの間の矛盾が生じないようにするためには、どういった技術が必要か、ということを策定しようとする動きだそうです。
そして、上記の構想に良く似た「バックキャスト」的な手法、つまり、望ましい未来を考えて そこに欠けているものを計画的に実現しようという動きが、日本からも進められようとしています。それは、日本発の構想「ムーンショット 2050」 という目標施策で、2018年に創設された新しい「ムーンショット型研究開発制度」により、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を、関係省庁が一体となって 世界中の研究者の英知を結集しながら推進する科学振興施策だそうです。「ムーンショット 2050」は、「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放されたサイバネティック・アバターの社会を実現しよう」という壮大な構想で( その具体的な内容は後述 )、「誰もが多様な社会活動に参画できる社会基盤」の実現がターゲットになっています。具体的な取り組みは、日本政府による主導・推進、そして、科学技術振興機構(JST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などの支援によって始められています。(この施策と「TWI 2050」構想とに直接の連携は ありませんが、2050年からのバックキャストによるSDGsの支援という意味では 発想が共通していると考えられます。)
こうした科学技術を取り巻く 内外の現状をふまえ、第11回横幹連合コンファレンスの大会テーマについて 宮里義彦先生にお伺いしました。
編集室》 第11回の大会テーマは、 「 サステナブル・イノベーションに向けて - 横幹知による深化と創発 - 」と伺っています。世界が「コロナ禍」に目を奪われている間に、内外では SDGsの達成のための支援などを含めて、ずいぶん大きな変化が進行していたという印象を持ちました。こうした世界の「バックキャスト」的な科学技術実装の新しい取り組みや、科学技術基本法自体の見直しをふまえて、今回のコンファレンス・テーマの決定までの経緯をお聞かせください。
宮里》 SDGsについては、前回 第10回のコンファレンスの大会テーマでもありました。それで、横幹知で そのエビデンス評価ができないかといった議論が、以前から横幹連合では継続されています。今回、「ムーンショット2050」という大きな目標設定が発表されて、「バックキャスト」という科学的手法に焦点が当たったこと。それから、第 6 期科学技術基本計画において、「イノベーション」や「人文科学研究の扱い」といった新しい領域に研究者の関心が集まっていることを契機に、いずれについても「横幹知による深化と創発」についての議論が必要だという思いを持つようになりました。
特に、「ムーンショット2050」では、サイバネティック・アバターという 「生身の人間の身代わりとしてのロボットや3D映像などを示すアバターに適切な機能を付与して、人の身体的能力、認知能力、および知覚能力を拡張するICT技術」の実現と社会的な実装を、「国民の社会活動参画のための社会基盤にしよう」という考え方ですから、こうしたイノベーションについて横幹知で議論することについては、是非とも必要なのではないでしょうか。
そうした考えから、横幹科学技術の「学問としての深化」と 「社会的問題の解決に向けた活動の活性化」 を目的として、新たな研究成果が得られた最先端の研究発表のみならず、問題提起、提言、研究構想などの 研究途上の内容についての講演発表を行なって頂くことが望ましいと思いました。そして、異分野の研究者や実務家と研究内容を討議して、価値観をぶつけ合うことによって、研究者自らが研究の方向性を確認し、新たな視点を得ることもできるのではないか、という意味を大会テーマには含めたつもりです。それで、テーマを 「 サステナブル・イノベーションに向けて - 横幹知による深化と創発 - 」と決めました、
「横幹知( 学会連合; システム・データ・数理・統計・情報・経営・経済・学習・知能・人文等の諸科学の知の集積 )により、2050 年を見据えた SDGs の新たな流れ( イノベーション )を学術的に深化させ、異分野科学の融合による新たな体系・仕組み・原理の構築( 創発 )を目指す」という意欲を込めました。
編集室》 なるほど。コンファレンスのセッションも、多彩なプログラムが用意されています。「こちら」 の企画セッション一覧を皆さまには ご覧いただければ、と思います。それから、 第6期科学技術基本計画の方向性については、特別講演が参考になる と伺いましたが。
宮里》 今回の特別講演は、文部科学省 文部科学審議官の松尾泰樹氏にご講演をお願いしました。「科学技術・イノベーションご担当」としてのお話は、文理融合の横幹連合にとって非常に時候を得た内容になるのではないかと楽しみにしています。
ところで、実は こうした科技施策の転換などの大きな動きは、2018年度から始まっていました。それが、世界的な新型コロナ肺炎の流行と2020年3月25日のWHOによる世界の「都市封鎖」の要請などを経たことによって、私たちにはポスト・コロナへの対応としての「システムの構造変化」という評価軸が加わったことになるのではないでしょうか。そのこともあって、コンファレンスにポストコロナに係わる企画セッションが用意されている他に、プレナリー講演では ロバート・キャンベル氏から 『日本古典と感染症〜古典籍から未来への問いかけ』 を お聞かせ頂けることになりました。
編集室》 プレナリー講演と、いくつかのポスト・コロナ関連の企画セッションを併せて考えると、感染症を、古典籍と 現代または未来からのバックキャストで挟み撃ちにしようという大変面白い試みになりそうですね。非常に楽しみです。
本稿をお読み頂いています皆さまにも、是非 ご賛同を賜り、第11回横幹連合コンファレンスへの オンライン参加を お勧めしたいと思います。
EVENT
【これから開催されるイベント】
横幹連合ホームページの「会員学会カレンダー」 を ご覧ください。
また、会員学会の皆さまは、開催情報を横幹連合事務局 office@trafst.jpまで お知らせ下さい。