横断型基幹科学技術研究団体連合 Transdisciplinary Federation of Science and Technology |
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横幹連合 NewsLetter Vol.1 Jan. 2004 |
空間と情報を横断するユビキタスインタフェース技術 土井美和子 (株)東芝 研究開発センター ヒューマンセントリックラボラトリー |
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1.ヒトとヒトを横断する これからの社会は、「誰でもいつでもどこでも」情報にアクセスできるユビキタスネットワーク社会であると言われている。ユビキタスネットワーク社会においては、「いつでもどこでも」情報にアクセスできるだけに、個人に適切な旬の情報(「今だけここだけあなただけ)の情報)をいかに与えるかがビジネスとして大きな鍵となる。そのようなユビキタスネットワーク社会において、誰もが簡単に使えるようにするユビキタスなヒューマンインタフェース技術(ユビキタスインタフェース技術)が重要となってきている。 ヒューマンインタフェース技術は、ヒトがモノを使う、あるいはヒトとヒトがシステムを介してコミュニケートする環境やシステムをユーザの視点から扱うものである。ここでいうユーザには、大きくスポンサーユーザとエンドユーザが存在する。 スポンサーユーザとは、研究開発に出資者、出資するか否かを決定できるユーザである。一方のエンドユーザとは実際に製品を使ってくださるユーザである。いわゆる家電などのコンシューマ製品では、多くの場合、エンドユーザとスポンサーユーザは一致している。これに対し、発電所やプラントなどの大規模システム、医療用機器などの専門機器、あるいは自動改札機などの公共機器などいわゆるインデント製品では、ほとんどの場合、スポンサーユーザとエンドユーザは異なっている。自動改札機を例にとると、そのエンドユーザはまさに、改札機に定期券、切符、あるいはプリペイドカードを使って通過する方々であり、スポンサーユーザは自動改札機を購入する鉄道会社である。 エンドユーザが望む使い易さとスポンサーユーザの望むコストベネフィットの良さを両立させるのがヒューマンインタフェース技術である。つまりヒトとヒトを横断した環境やシステムを提供するとともに、ヒトとヒトを横断した問題解決を行うのがヒューマンインタフェース技術である。 2.空間を横断する ビットマップディスプレイとポインティングデバイスにより実現したGUI(Graphical
対話的ヒューマンインタフェース技術では、応答時間を0,1秒以下にすることが大前提となっている。図1に示すように、1980年当時は、アプリケーションとOSのみを考慮した設計をすればよかったが、現在は、それ以外に、ウインドウシステムや、ネットワークの階層も考慮した設計をせねばならなくなっている。つまり、ネットワークからアプリケーションまで、情報空間を横断した応答時間設計が要求されている。 4.情報空間と実空間を横断する日本語ワープロは1978年に初めて製品化されたが、その決め手になったのは、辞書の電子化と同音異義語の選択という操作の電子化であった。さらにWSや機械翻訳ではこれらにあわせて、WYSIWYG (What you see is what you get)という編集の表現(視覚化)を電子化した。これにより、ユーザは作業結果をシミュレーションしながら、作業を進めることが可能となり、大いに効率アップが可能となった。
このオフィスにおける知識の電子化の流れは、次に対象を現場に移した。それが、VR(Virtual Reality)である。VRでは、オブジェクトをCGデータとして電子化し、さらにオブジェクト間の関係やオブジェクトの動作も電子化し、現場作業を仮想空間の中でシミュレーションし、視覚化、聴覚化することで、実空間を仮想的に体験することを可能とした。現在は、対象空間が現場から、街角に移っている。地図を電子化して情報空間を構成し、その情報空間を用いて、ユーザのいる実空間のナビゲーションを行っている。さらに、実空間に存在する店舗などの情報をリアルタイムに、その場にいるユーザに提供することが可能となってきた。まさに、情報空間と実空間を可能としたわけである。以上の流れをまとめると図2のようになる。 この情報空間と実空間の横断は、まだ始まったばかりである。ヒトの空間認知、状況認知に関する人文科学あるいは社会科学での知見をもとに、工学と連携していくことで、あらたなパラダイムシフトが起こる予感がする。【参考文献】 |
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