横断型基幹科学技術研究団体連合
Transdisciplinary Federation of Science and Technology


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NEWS LETTER
目 次 No.001, Jan. 2004 
 1. 『挨拶』(横幹連合会長 吉川弘之)
 2. 『ニュースレター発行の挨拶』(理事 木下源一郎)
 3. 『横幹連合の活動』
   (1) 臨時総会・会員学会会長懇談会
   (2) 知財立国実現のためのパブリックコメント(知財問題委員会)
   (3) 調査研究委員会の発足
 4. 『横幹技術推進協議会』(理事 舘  暲)
 5. 『空間と情報を横断するユビキタスインタフェース技術』 (理事 土井美和子)

1. 『挨拶』   横幹連合会長 吉川弘之((独)産業技術総合研究所)
土井美和子氏
吉川弘之会長

 基礎研究は役に立たないという人がいるが、それは間違いである。いま、私たちが日々使っている知識の多くは、基礎研究と呼ばれる知識生産によって生み出された、〈基礎的な〉知識の上に成り立っている。人間の心の動きや思考の背後には人文科学があり、社会的行動に対しては社会科学がある、これらの科学が直接役立つようには見えなくても、個々の動きや行動の位置づけに対してある見通しを与えるものとして、それらは重く存在しているのであり、動きや行動はそれらの上でかろうじて整合性を保ちながら成り立っているのが現代の特徴だといってもよいのではないか。自然科学ではこのことがもっと明白に現れている。多くの現代技術は自然科学的な知識を基礎にしているし、産業が競争力強化のために科学技術を行うことはもはや一般的なことである。いわば、私たちの知的活動のほとんどは基礎研究によって生み出された体系的知識としての人文科学、社会科学、そして自然科学の上に成立しているのである。

 その意味で科学は私たちにとって恩恵であるが、少なからず脅威をももたらしている。科学の急速な進歩による知識格差の拡大と、知識利用の増加に伴う人間行動の広範化による地球環境破壊は、その典型である。ここでこれらの脅威が科学そのもののせいだとするのは単純すぎる。そうではなく、科学的知識の全体が十分に調和しておらず体系が不十分だと考えたほうがいい。したがってこれらの相互に矛盾しながら調和を乱す問題を解決するためには、さらに進んで知識を用いることが必要なのであるが、そのときその背後に、より調和の取れた、そしてより体系的な基礎的知識が必要なのであり、それを生み出すことがこれからの望ましい基礎研究なのである。そしてこの期待は以下に述べる新しい研究によって現実的に表現される。

 基礎研究は役に立たないという言い方およびそれに基づく一般の誤解を覆そうとする一軍の研究者が存在する。この研究者たちの研究は、狭義の基礎研究を超えて、人間の行為に対し基礎を提供する字義通りの基礎研究へと概念の拡大を目標にしているのである。

 最近発足した横断型基幹科学技術研究団体連合は、このような研究者の集まりの代表的なものといえるであろう。この連合は比較的小規模の学会の集まりであるが、それぞれは固有の現実的な課題を持っている。そしてその課題の解決のために必要な知識体系を展開しようとしているのである。しかしそのとき、それぞれが背景としてもつ特定の〈基礎的な〉学問領域に属する知識では不十分であることを主張する。その結果、各学会は伝統的にその学会の基礎であると考えられている領域を超えて他の基礎的領域の知識を用いたり、他の小規模な学会で扱っている現実的課題の成果を援用したりする。そしてもちろん、学会間の共同研究へと発展するのである。

 一見このような連合は、ひたすら現実的問題の解決を、既存の知識を応用して求めているかのように見える。それはもちろん一つの目標である。しかしこれは、領域化した基礎科学の限界を人間行動と知識との関係という視点を通じて超えようとする学問上の運動という面を強く持っている。現代の学問が細分化した結果、一つ一つの領域が現実問題に対して無力になってしまったことはすでに指摘されて久しい。たとえば日本学術会議はその問題を、領域を超えた俯瞰的視点を行動によって解くことを試みたのであった。この連合の場合、俯瞰的視点が行動によって現実化するものであり、正しい設定である。学会間の協力や産学協同などの行動が、基礎研究に新しい流れを作り出すことが期待される。


2. 『ニュースレター発行の挨拶』
  横幹連合 出版担当理事 木下源一郎(中央大学理工学部)
 横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)は2003年4月7日に第一回総会を開いて発足した。また、同年6月に設立シンポジウムを開催し、同時に、政策提言プログラムの発表も行った。同年8月にはホームページも立ち上がり、学会としての体裁が整った。

 ホームページが立ち上がると同時に、そのレイアウトや掲載内容の検討が行われ、ニュースレターならびにe-Journal(英文論文)の発行が決まった。そこで、出版委員会を開いて、ニュースレター発行のための準備を行った。ニュースレターの編集委員長は大石 進先生(青山学院大学、精密工学会)である。

 編集委員会では、2003年12月1日の臨時総会の開催時に、この内容をまとめてニュースレターとして発行することが決まり、これが創刊第1号となった。今後、これに引き続いて発行して行く予定である。

 ニュースレターは横幹連合に所属する学会でも発行しているところがあり、これは学会と会員とをつなぐ即時性のある発行形態である。しかし、会員がホームページにアクセスしないとその情報は時代遅れとなり二面性を持っている。また、印刷物のニュースレターもあり、カラー版のきれいなものもある。横幹連合は学会が集まってできた学会であるので、各学会の会員は自分の所属する学会のホームページを介してこのニュースレターを読むことになる。

 いずれにしても、このニュースレターが会員個人の教育あるいは研究に、横幹連合として意義のあるものとならなければ意味もなく、このために内容の検討も必要となる。横幹連合は前にも述べたように学会の集まりであり、それぞれの学会のテリトリーもあり、目指す方向も異なっているかもしれない。そこで、横幹連合の様々な活動を通じて、すこしでも学会間の隙間を埋めて、各学会あるいはそこに所属する会員にとって有意義なものとなるように、その会員の方々のご支援をお願いしたい。


3. 『横幹連合の活動』

(1) 臨時総会・会員学会会長懇談会

会長懇談会

日時:平成15年12月1日(月)14:00~18:00
場所:学士会館 本館210号室(東京)

■臨時総会(14:00~15:00)
 出席代議員数11名、委任状13名
 出席代議員総数24名で臨時総会成立

1. 第一号議案 新規会員加盟承認
 下記の8学会の新規会員加盟が認められた。

(1) オフィス・オートメーション学会 (5) 日本コンピュータ化学会
(2) 可視化情報学会 (6) 日本数理科学協会
(3) 研究・技術計画学会 (7) 日本生物工学会
(4) 地域安全学会 (8) 日本バイオメカニクス学会

2. 第二号議案 規約一部改正案
 承認  ※【参考】改訂後の「横幹連合 規約」はこちら

3. 活動現況報告
 ・経過・活動状態について説明を行い了承された。
 ・舘  暲理事(産学連携担当)より、「横幹技術推進協議会」について説明があった。

■会員学会 会長懇談会(14:50~18:00)

土井美和子氏
講演者の土井美和子氏

1. 講演
 「空間と情報を横断するユビキタスインタフェース技術」
  土井美和子氏((株)東芝 研究開発センター
  ヒューマンセントリラックラボラトリー)

2. 調査研究委員会 活動計画説明

 ・シミュレーションとSQC調査研究委員会
   椿 広計 氏
   (筑波大学社会工学系、日本品質管理学会)

 ・開発・設計・プロセス工学調査研究委員会
   林 利弘 氏
   ((株)日立製作所 モノづくり技術事業部、設計・ソフト技術部会)

 ・横断型基幹科学教育に関する調査研究会
   原田 昭 氏(筑波大学芸術学系、日本デザイン学会)

3. 吉川会長コメント
 ・横幹連合はいろいろな学会が互いに絡み合っており、協力が難しく、またそれぞれにデシプリンを持ち、互いに有限であり閉じている。これらの協調を行うには互いに行動が必要となる。


 (2) 知財立国実現のためのパブリックコメント(知財問題委員会)

横幹連合 知財問題委員会(担当理事・今野 浩(中央大学理工学部))では、つぎの「知財立国実現のためのパブリックコメント」を政府に提出した。

知財立国実現のためのパブリック・コメント
平成15年10月21日

 表記の件につき、横断型基幹科学技術研究団体連合 (略称横幹連合、会長吉川弘之)に設置された「知財問題委員会」の意見を申し述べます。

1.知的財産高等裁判所(知財高裁)の創設について

 われわれは、この構想の実現を強く支持したいと思います。
 世界第2の経済大国であり、科学技術創造立国を標榜するわが国が、知財裁判所の設立に関して米国はもとより、アジア諸国(タイ、韓国、オーストラリア)の後塵を拝しているということは、わが国の産業発展に力を尽くしてきた技術者として、まことに残念なことといわなくてはなりません。
 法律は本来、人間と人間、そして人間と社会との関わり合いを扱うための体系であり、人間と自然、そして人間と技術に関わる問題は、主としてその専門家たち、すなわち科学者と技術者が関わってきたものです。もちろん、技術紛争には人間的要因が関与することがないわけではありません。したがって法律的知識が必要なことはもちろんですが、技術の新規性、進歩性、さらには権利侵害の有無を判定する上では、技術者の意見が重視されるべきではないでしょうか。
 法律家の中には、これらの判断も法律家が行うべきだという主張もあるとのことですが、これはたとえていえば、パイロット資格を持たない人が、副操縦士のアドバイスのもとにジャンボ機の操縦を行うにも等しい行為といわなくてはなりません。
 技術紛争においては、技術侵害に関わる判断は、技術者や企業に対する死刑宣告につながる場合すらあります。このように重大な問題に対して、技術的知識なしに判断を下すことは、技術者として到底容認できるものではありません。
 また法曹界には、技術者のアドバイスの下に裁判を行う「専門委員制度」を導入すれば十分だという意見もありますが、専門家がいかに適切なアドバイスを行っても、技術に関する基礎的な知識を欠いた人に対しては、ほとんど効果を持ち得ないということは、いくつかの事例で明らかになっています。専門委員制度は、技術に関する素養をもつ「技術判事」の存在を前提しなくては、うまく機能するはずはありません。
 このようなことを踏まえて、米国の特許裁判所(CAFC)の判事は、法律関係者だけでなく、博士号をもつエンジニアや、技術に精通した特許弁護士など、幅広い分野から選任されており、適正な紛争処理の実現に効果をあげているといわれています。
こう考えると、技術的案件の判断が、これまで法律家のみに任されてきたこと自体が異常なことであり、このような制度上の欠陥を放置してきた国の怠慢は、厳しく批判されるべきであります。しかしその一方で、われわれ技術者が技術そのものだけに気をとられ、技術をとりまく社会システムに関心をもたなかったことにも一半の責任があります。
これから先の知財制度は、法律の専門家と技術の専門家が互いの長所を生かし、短所を補うことによって、科学技術創造立国を支援してゆくべきではないでしょうか。
 以上、われわれは「知財高裁」の早期設立と、その判事の少なくとも半数以上を技術に関する素養をもった「技術判事」とする制度の実現を強く希望いたします。

2.特許審査迅速化法の制定について

 この件についても全面的に支持したいと思います。
インターネットの普及をはじめとする情報システムの進歩によって、ここ10年の間に技術進歩は、従来に比べて数倍加速されたものとみられています。実際、インターネットによるデータ収集と先端的ソフトウェアの使用によって、従来6ヶ月以上の時間が必要とされていた研究プロジェクトが、1ヶ月で終了した事例も報告されています。
 しかしこれだけの技術進歩にも拘わらず、依然として人類の将来には、エネルギー、資源、食料、環境問題などの大問題が横たわっています。人類が暗いトンネルを抜け出すためには、これまで以上に技術開発を迅速化することが求められているのです。
 ところが技術開発がスピードアップしている一方で、わが国では特許審査に平均で9年の歳月を要しているといいます。これが技術発展にとって大きな阻害要因となることは明らかです。
 せめてEUの6年、望むらくは米国の3年に近づけるべく対策を講じなければ、わが国の特許制度は機能不全に陥る可能性が高いのではないでしょうか。(技術の現場から言えば、3年でも遅すぎるくらいです)。

*横幹連合は、国内の30の学会を横断的につなぐ組織として、2002年に設立された団体で、関連学会会員総数は延べ53,000人に達しています。そこで以下に、横幹連合メンバー学会リストを添付いたします。

応用統計学会、経営情報学会、計測自動制御学会、システム制御情報学会、社会・経済システム学会、スケジューリング学会、精密工学会、日本応用数理学会、日本オペレーションズ・リサーチ学会、日本感性工学会、日本経営工学会、日本経営システム学会、日本計算機統計学会、日本計算工学会、日本シミュレーション&ゲーミング学会、日本シミュレーション学会、日本社会情報学会、日本植物工場学会、日本信頼性学会、日本知能情報ファジィ学会、日本デザイン学会、日本統計学会、日本時計学会、日本バーチャルリアリティ学会、日本品質管理学会、日本リモートセンシング学会、日本ロボット学会、ヒューマンインタフェース学会、プロジェクトマネジメント学会、文理シナジー学会
以上
文責 今野 浩
    横幹連合理事、「知財問題委員会」委員長
    中央大学理工学部教授

 (3) 調査研究委員会の発足

つぎの調査研究委員会が発足することとなった。設置期間はそれぞれ2年間である。  ※【参考】「調査研究委員会 規程」はこちら

シミュレーションとSQC調査研究委員会
主査・椿 広計 氏(筑波大学社会工学系、日本品質管理学会)
【目的および期待される成果】
本調査研究委員会の目的は、新技術開発のために用いられる数値シミュレーションの効率化、実機実験に対する予測精度の向上のために実効的な横断型科学技術研究を産学協同で加速することである。このことを通じて、わが国の技術競争力加速に資することが期待される。

開発・設計・プロセス工学調査研究委員会
主査・林 利弘 氏((株)日立製作所 モノづくり技術事業部、
設計・ソフト技術部会)
【目的および期待される成果】
企業や大学・研究所等で個別的に研究・開発・実務適用のおこなわれている、開発・設計プロセス工学技術とカテゴリー化できる各種技術を横断的かつ俯瞰的に整頓して眺め、相互の連関の明確化と個々の価値の再認識を行うとともに、それらのシナジー活用を図るための活用法や必要な技術の研究開発および個々の技術の一層の価値向上を図るための諸活動を行い、わが国の技術・製品競争力強化に資する。

横断型基幹科学教育に関する調査研究会
主査・原田 昭 氏(筑波大学芸術学系、日本デザイン学会)
【目的および期待される成果】
横断型基幹科学技術はまだ実態が明確になっておらず、政策提言プログラム「横断型科学技術の役割とその推進」教育WGでの活動を継続し、学部大学院での横断型基幹科学技術者教育内容の具体化すること、ならびに、JABEEの認定基準を視野に入れつつ将来的に技術者教育の一つの標準となる横断型基幹科学技術教育カリキュラム構成を検討することを目的とする。

4. 『横幹技術推進協議会』

 産学連携担当理事・舘  暲(東京大学大学院情報理工学系研究科)



5. 『空間と情報を横断するユビキタスインタフェース技術』
  講演者:事業担当理事・土井美和子
       ((株)東芝 研究開発センター ヒューマンセントリラックラボラトリー)

  ※詳しい講演内容はこちら

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