【協力】 中野一夫様(構造計画研究所) 山村公明先生(神戸大学名誉教授) 横幹連合 広報・出版委員会 * * * ■横幹連合 ニュースレター編集室■ 武田博直室長(セガ、日本バーチャルリアリティ学会) 高橋正人委員(情報通信研究機構、計測自動制御学会) 坂本 隆委員(産業技術総合研究所、ヒューマンインターフェイス学会) 村井康真委員(工学院大学、プロジェクトマネージメント学会) 小山慎哉委員(函館工業高等専門学校、日本バーチャルリアリティ学会) 鈴木一史委員(放送大学、日本感性工学会) 河村 隆委員(信州大学、日本ロボット学会) ■ウェブ頁レイアウト■ 原 尚幸委員(東京大学、応用統計学会) |
横幹連合ニュースレター
<<目次>> No.019, Oct 2009 |
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巻頭メッセージ |
活動紹介 |
参加学会の横顔 |
新たな科学革命の必然を主張し、その到来に備えよう * 横幹連合理事 出口光一郎 |
◆ 第20回横幹技術フォーラム |
【横幹連合に参加している 学会をご紹介するコーナー】 ◆スケジューリング学会 |
イベント紹介 |
ご意見はこちらへ |
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◆第23回横幹技術フォーラム ◆第3回横幹連合コンファレンス ◆これまでのイベント開催記録 |
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巻頭メッセージ
新たな科学革命の必然を主張し、その到来に備えよう
出口光一郎 横幹連合理事
東北大学
人間・社会の問題の間口が広がり、個別の科学技術では対応できなくなっていること、その解決のために分野を横断する取り組みが必要であることは、それが具体的な政策にまでなっていることからも分かるように、広く認知されてきました。横断型科学技術の必然性が世の中に受け入れられてきたことは、我々の努力が実を結んできた成果なのかも知れません。ただ、横幹連合からのメッセージが、いま横断型が必要・必然であるという議論についての「老舗」を単に主張するだけになってしまっていないか、危惧をしています。まだ、何も達成されてはいないのです。このような状況下で、横幹連合が(会員学会も含めて)さらに内外に発すべきメッセージは何なのか、また、そのメッセージのもとに連合の全員が力を合わせることができるのかどうか、改めて仕切り直して考えてみる必要があるように感じます。
横幹連合のそもそもの発端は、「横断型を本質的に内包する」科学技術、すなわち「理論」「システム」「ソフトウェア」を基盤とする科学技術の振興を図ることにありました。幅広い様々な分野がその垣根を越えて、横に手を結ぶことは重要です。しかし、それを越える志向を持っていたことを、思い出しましょう。
細分化された知を統合する「新しい知の創生」(すなわち「統合知」の創生)は必然です。それと共に、「知を利用するための知」の確立と整備が、我々の課題です。ただし、この「知を利用するための知」とは、
・知を利用するための横断型の道具としての科学技術的な側面
・「知を利用する知」としての機能を内包する科学の振興という側面
の二つを指しています。前者は例えば、爆発する知の総量を前に、それをいかに使いやすくするかという「道具」の探求の側面で、その前提にネットワークの整備とデータベースの完備があります。一方、これらと後者とはレベルが異なります。なぜなら、後者は体系化された知の創生と不可分だからです。前者と後者の違いは、体系的な知の創生の必要性と可能性から生じます。
例えば、地球環境をとりまく様々な重要課題では、多様な科学の成果の「知を利用する知」を必要としています。多種多様な要因から発する様々な環境問題の根底にあるものは、何なのか。そこでは、後者の側面を持つ科学の創生が模索されています。しかし、後者を考える以前に、溢れかえるデータと、生活に基づく多様な要求の増加に対して、前者の道具の側面をいかに利用するかが主要な科学の関心ごとになっていて、環境を守るとはどういうことかについての科学者同士のコンセンサスすら、確立されてはおりません。
それぞれの個別科学の粒度は、時代を経て、だんだん小さいものになっています。いわゆる科学技術の細分化です。一方、個別の科学が扱わなければならないそれぞれの問題の粒度は、だんだん広く大きくなってきています。多分、科学の方の粒度がだんだん小さくなって、問題の方の粒度がだんだん大きくなり、どこかで交差して、対応すべき科学が破綻をして、その対応関係でリストラクチャリングが行われたのが、歴史上の「科学革命」ではないかと思います。
17世紀の第1の科学革命では、物理、化学(の原型)が、その対象としていた自然現象を説明しきれなくなって破綻して、数学の力が科学の再構造化という革命をもたらしました。19世紀の第2の科学革命では、工学や生産の科学("術"であった)が、それぞれ物の加工、すなわち物質の変化を説明できなくなり、また破綻することになりました。20世紀の第3の革命では、(広い意味での経営や最適化を包括した)システムを扱う科学技術が破綻して、革命をもたらしました。
今、21世紀を迎え、人間の生活に伴って生じた、上記の環境問題も含めた一見ばらばらに見える、あまりに多種多様な諸問題を、多様な科学が個別に対応しようとして、そして破綻を迎えつつあるように思えるのです。第1、第2、第3の科学革命の延長で言えば、次には、人間・社会・環境を扱う科学技術が破綻して、第4の科学革命が必然になります。そこでのリストラクチャリングを担うのは、「知を利用する知」としての機能を内包する科学を基盤とした「知の統合」です。横幹連合の使命は、この第4の科学革命の必然性を主張し、その到来に備える、先を見通す歴史観を打ち立てることにあります。
このことが、横幹連合が、いま何を主張すべきなのかという問題の根底なのではないでしょうか。