【協力】 横幹連合 広報・出版委員会 * * * ■横幹連合 ニュースレター編集室■ 武田 博直室長(セガ、日本バーチャルリアリティ学会) 高橋 正人委員(情報通信研究機構、計測自動制御学会) 小山 慎哉委員(函館工業高等専門学校、日本バーチャルリアリティ学会) 鈴木 一史委員(放送大学、日本感性工学会) 河村 隆委員(信州大学、日本ロボット学会) ■ウェブ頁レイアウト■ 中野 悠紀委員(お茶の水女子大学) |
横幹連合ニュースレター
<<目次>> No.026 Jul 2011 |
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巻頭メッセージ |
活動紹介 |
参加学会の横顔 |
「統計科学の研究者の 横断型科学との 関わり」 * 横幹連合副会長 統計数理研究所副所長 田村 義保 |
第30回横幹技術フォーラム |
【横幹連合に参加している 学会をご紹介するコーナー】 ◆日本シミュレーション&ゲーミング学会 |
イベント紹介 |
ご意見はこちらへ |
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◆横幹連合緊急シンポジウム ◆これまでのイベント開催記録 |
ニュースレターへの ご意見・ご感想を お聞かせください。 * E-mail: |
巻頭メッセージ
統計科学の研究者の横断型科学との関わり
田村 義保 横幹連合副会長
統計数理研究所副所長
この度の東日本大震災により被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。筆者は神戸の出身ですので、1995年の阪神・淡路大震災の際には、地震があった5日目に神戸に行き、その被害の状況を目の当たりにして衝撃を受けました。また、大規模な台風の被害も、中学時代に経験しています。しかし、今回の地震や津波の被災地の様子は、(マスコミの報道で知るのみですが)私の生涯では、空前のものでした。絶後を祈るとともに、被害を受けられた皆様の物心両面での回復・復興を、心から祈念致しております。また、統計学の研究者として、予測は無理でも、減災や速やかな復興のために貢献できていないことを、深く反省しております。
筆者の専門分野は、時系列解析、計算統計学です。今年度から横幹連合の副会長を拝命させて頂きますが、統計学は、横型の学問の代表選手であると自負しています。横幹連合での活動は、日本統計学会の代議員として始まりましたが、平成21年度から理事に任命され、昨年度の第3回横幹連合総合シンポジウムでは、実行委員長を務めさせて頂きました。
横幹の事業には、アカデミック・ロードマップの作成は、もちろんのこと、横幹連合発足前の企業ヒアリングにも、発足後の種々の調査活動にも協力させて頂きました。発足前の企業ヒアリングでは、日本を代表する情報システム関連の企業などに伺いました。
そのときヒアリングした内容には、「Aという事業のために使っている技術が、Bという別な分野の事業でも使えるようになれば、それが横型の技術である」という回答があったと記憶しています。私の漠然と思っていた「横幹的な学問」のイメージからは、若干の違和感がある回答のように、当時は感じられました。しかしながら、「統計学」も、よく考えれば全く同様であることに、間もなく気がつきました。
統計学は、データの科学です。最初は、ある分野に固有のデータを分析するために、理論・手法を開発するのですが、それを一般化することで、他の分野のデータも解析できるようになります。このようにして発展して来た理論・方法であることから、「科学の文法」という称号が与えられており、統計学の研究者である私が、横型の科学の代表選手であるという思い入れを持つ理由となっているのです。もちろん、横型の学問が、統計学だけではないことも知っております。OR(オペレーションズリサーチ)、システム理論、シミュレーション理論なども、横型の学問の代表選手です。事実、横幹の会員になられている学会の多くの研究内容は、横型の方法論であるとともに、複数の分野の知識・経験を融合・統合したものであることから、新たな横型の学問体系を構築する際の基盤となるものだ、と考えております。
さて、筆者は、統計数理研究所(統数研)という共同利用機関に勤務して、実に、2011年6月末日で丸30年を勤続し、現在31年目に入った研究者ですが、これまでに、萌芽的な研究分野の研究者との横に広い共同研究を数多く行ったことで、新たな分野の創出に貢献することができたと自負しています。「複雑系」という分野も、あまり日本では研究されていなかった頃に、研究会を数度開催して、この領域を立ち上げ、普及に努めました。また、「逆問題」(出力=結果や観測値から、入力=原因を求める応用数学の一分野)についての研究会も長く主催し、医用画像の解析方法の発展などにも貢献して来ました。最近では、経済物理、社会物理の共同研究を主導することにより、物理学で発展してきた手法を用いて、金融データや社会データを扱うことにも協力しています。
副会長としての2年の任期においては、引き続き、文理融合に寄与して行きたいと考えています。特に、文系の学問分野のシミュレーションと理系のそれについて、両分野の研究者を集めた共同研究(あるいは研究会)を行うことで、両者の利点を活かした新しいシミュレーション技法を生み出したいと考えています。この他に、T型、π型人材(注)の育成が統計数理研究所の中期計画の一つにあるのですが、これにも横幹連合、産業技術総合研究所(産総研)、統数研が協力する形で取り組んで行ければと考えています。サービス科学、あるいは、第六次産業(農商工の連携)の人材育成には、特に興味を持っています。
少し大風呂敷過ぎるような気もしますが、木村前会長から託された会員学会増強の努力も含めて、これからの2年間を、副会長として横幹連合の発展に貢献できればと考えております。
(注) T型、π型人材:専門外の幅広い知見に加えて、専門領域を1つ(T型)、あるいは、2つ(複数、π型)深掘りしている人材のこと。
(注釈の文責は、編集室)