【協力】 横幹連合 広報・出版委員会 * * * ■横幹連合 ニュースレター編集室■ 武田 博直室長(VRコンサルタント、日本バーチャルリアリティ学会) 小山 慎哉副室長(函館工業高等専門学校、日本バーチャルリアリティ学会) 高橋 正人委員(情報通信研究機構、計測自動制御学会) 中田 亨委員(産業技術総合研究所、ヒューマンインタフェース学会) 岡田 昌史委員(東京工業大学、ロボット学会) ■ウェブ頁レイアウト■ 稲田 和明委員(東北大学) |
横幹連合ニュースレター
<<目次>> No.041 May 2015 |
||
巻頭メッセージ |
活動紹介 |
参加学会の横顔 |
地域創生:横幹科学技術からの貢献が期待される新たな場 * 舩橋 誠壽 横幹連合副会長 北陸先端科学技術大学院大学 シニアプロフェッサー |
第43回横幹技術フォーラム |
【参加学会の横顔】 掲載ページ一覧 |
イベント紹介 |
ご意見はこちらへ |
|
◆第45回横幹技術フォーラム ◆第6回横幹連合コンファレンス |
ニュースレターへの ご意見・ご感想を お聞かせください。 * E-mail: |
巻頭メッセージ
地域創生:横幹科学技術からの貢献が期待される新たな場
舩橋 誠壽 横幹連合副会長
北陸先端科学技術大学院大学 シニアプロフェッサー
本年4月の定時総会から、新たに副会長の職を拝命いたしました舩橋です。
私は昨年の11月30日に、横幹連合 事務局長を退任いたしました。約5年間、多々、至らないことがあったにもかかわらず、皆様から多くのご理解とご支援をいただいて、仕事を遂行することができました。この場を借りまして、厚く御礼申し上げます。
5年前、事務局長着任時の「マニフェスト」に掲げた内容の一つは、「横幹」の理念が社会に理解されて、会員学会の方々が、いくつかの政府・企業からの委託研究プロジェクトに取組んでいる状態にしたい、ということでした。しかし、この目標に対しては、残念ながら、5年間で科学技術振興機構からのプロジェクトを1件受託するだけに終わっています。本プロジェクトの受託と完遂にご努力いただいた方々に心より御礼を申し上げますと共に、目標には至ることができませんでした事、ここに深くお詫び申し上げます。
そして、改めまして、4月より副会長の職を拝命いたしました。引き続いて、横幹連合の存在の社会への発信と財政的な対応のために努力せよ、との皆様からのお言葉と受け止めて、精進して参りたいと思います。更なるご支援を賜りたく、宜しくお願い致します。
さて、昨年9月に、石破茂 地方創生担当大臣の下、まち・ひと・しごと創生本部が設置されましたことは、皆様ご承知の通りです。地方創生は、安倍政権にとってアベノミクスを全国に展開するための最重要課題であると位置付けられていますが、この政策は、横幹科学技術にとっても注目すべき大きな意味があるように思っています。
この政策の趣旨の根底には、次のような考えがあるのではないでしょうか。すなわち、日本は急速に人口減少社会に突入しつつある。これまでは、地方が、若者を大都市圏に供給してきたのだが、もはや、地方に若者はいなくなり始めている。さらに、大都市圏の出生率も著しく低い状態である。なんとか、子育てにふさわしい地方に若者を呼び戻して、地方の人口減少を食い止め、国としての活力が損なわれないようにしたい。もちろん、この他にも、大都市圏を子育てにやさしいところに転換するであるとか、高齢者に活力を持ち続けてもらうとか、いろいろな政策オプションがあるのかもしれませんが、「地方」をなくしたくないという人々の共通の想いに応えなければならない、ということのように思います。
これを推進するために、政府は、昨年11月に、まち・ひと・しごと創生法を制定して、「政府が、地方の創生に努力する事と同時に、全国1700にのぼる自治体には、どのように自分たちが地域を経営して行くかの施策を立案する義務がある」と定めました。そして、12月には、政府としての地方創生の総合戦略を定めて閣議決定しました。すなわち、その戦略を、① 地方での雇用創出、② 地方への人の流れの形成、③ 結婚・出産・子育て希望への対応、④ 時代にあった地域作り・地域連携、という4項目にまとめたのです。それと共に、全国1700の自治体に対して、2020年を目標年として、2015年度中に、それぞれの地域の人口見通しをつくり、「どんな施策を行うか」という地方版総合戦略を立案・策定するよう定めました。
しかし、地方版総合戦略をつくりましょう、と言われて簡単にできるものではないことも、創生本部では十分認識しています。そこで、各自治体の政策立案を助けるために、① 戦略立案の基礎となるようなデータベースを整備しましょう、さらに、② 国家公務員を地方に派遣しましょう、③ 財政的な支援も致しましょう、ということになりました。4月21日にオープンした RESAS(Regional Economy and Society Analyzing System; 地域経済分析システム)については、ご存知でしょうか。いまだ検索頻度が低いようで、インターネットの検索では、ごく最近まで大手半導体メーカの名前が検索結果として上位に返ってきてしまうほどでしたが、RESASは、各地域の総合戦略を立案するために創生本部が提供を開始したデータベースで、地域別の人口データや、観光に関わる人口流動データ、産業データを参照し、ここからダウンロードすることができます。
ところで、横幹連合は、2010年に着手した課題解決活動として、香川大学大学院 地域マネジメント研究科長、板倉宏昭教授を中心に地域創生に取組んできました。具体的には、横幹コンファレンスや横幹シンポジウムで、企画セッションを継続して開催しています。併行して、エージェントシミュレーション技術の地域創生への展開として、東京工業大学 大学院総合理工学研究科、寺野隆雄教授を中心に、横幹連合として科学技術振興機構からの委託事業を行なった、という実績もあります。横幹技術フォーラムとして、産業技術総合研究所のお力をいただき、気仙沼市の復興への取組みも議論して参りました。また、昨年には、地域行政にも関わりが深い日本計画行政学会に、横幹連合へ加盟していただきました。「地域創生のために、国を挙げて取組もうという動きがある。」「そして、横幹連合では横断性を特色として、この課題に対する備えを高めてきている。」「さらに、我々のアイデアを確認し育てる上で必要とされる関連データも、整備されつつある」という理想的な状況に、現在はあります。そして、地方自治体には、2015年度中に2020年を見据えた計画を立案しなければならない、という喫緊の取組みが課されてもいるのです。このような取組みに、横幹連合が貢献できれば大変に素晴らしいことであると思います。しかし、これだけが貢献の機会ではありません。実は、人口減少問題については、いろいろな段階を経て問題が顕在化すると言われているのです。2025年というのは、団塊の世代が、すべて「後期高齢者」になるという大きな節目でもあり、地方との関係を踏まえつつ、急増する大都市圏の後期高齢者に対してどのようにサービスを提供するかが大きな課題になると予想されています。
横幹連合の活動は、その中長期計画で、理念から実践に展開すると掲げられています。地域創生には、未来を展望しながら個別の施策にダイナミズムを与える、横断的な取組みが不可欠であると思われます。我々の実践的な活動が求められるとても大切な場が生まれ始めていることに、私は注目しております。