横幹連合ニュースレター
No.042 Aug 2015
<<目次>>
>■巻頭メッセージ■
生物工学・生命科学分野における横幹的アプローチの重要性と期待
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青柳 秀紀 横幹連合理事
筑波大学 生命環境系 教授
■活動紹介■
●第44回横幹技術フォーラム
■参加学会の横顔 ■
総会特別講演「合意形成の条件 - 社会学の立場から」
■イベント紹介■
◆第6回横幹連合コンファレンス
■ご意見・ご感想■
ニュースレター編集室
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横幹連合ニュースレター
No.042 Aug 2015
参加学会の横顔
毎回、横幹連合に加盟する学会をご紹介していくコーナーですが、
今回は、定時総会(4月24日)特別講演「合意形成の条件 - 社会学の立場から」をご紹介します。
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「合意形成の条件 - 社会学の立場から」
横幹連合2015年定時総会 今田高俊氏による特別講演
(東京工業大学名誉教授)
2015年定時総会(4月24日)の最後に、特別講演として、今田高俊氏(東京工業大学名誉教授)による「合意形成の条件 - 社会学の立場から」と題する講演が行なわれた。その終わりに、司会の遠藤薫氏は講演を要約して、「世界的にグローバリゼーションが進む中で、合意形成というものがこれまで以上に重要になり、またその解決方法として、特にガバメントからガバナンスへ、という動きも、多方面で議論されています。本日のお話も、それに関して大変に示唆に富んだものでした」と述べた。ガバメント、ガバナンスという用語については、改めて解説する必要も無いかもしれないが、「ガバメント」というのは、政府が「お上=権力の立場」から行なう、法的拘束力のある統治システムのことで、対照的に、「ガバナンス」は、ある組織や社会のメンバーが自ら主体的に関わって意思決定を行ない、「合意形成」に至るシステムのことだと言われている。
ところで、今日の日本の新聞、テレビ、インターネットなどのメディアでは、ダム建設などにおける公共工事の無駄遣いや原発についての報道が、「行政の(ガバメントの)失敗」という文脈で報じられ、政府の支持率の低下を招いている(注1)。しかし、(遠藤氏が言及されたような、)行政府を含めた利害関係者のすべてが参加して、社会システムが自ら、主体的な意思決定の結果「合意」に至る「ガバナンス」の理論的な枠組みは、そもそも、どこかに存在しないものだろうか。ところが、意外なことに「合意形成」は、「これまで社会理論の主題として扱われてこなかったといっても過言でないテーマ」(注2)に他ならないそうだ。
ともあれ、上述したようなメディアの過熱報道によって「合意形成」についての国民的な関心が高まる中、「自己組織性」(注3)についての研究で高名な今田氏による「合意形成の条件」についての特別講演が行なわれた。講演に対する総会参加者の期待は、非常に高まっていた。
(注1)本特別講演の行なわれた2015年4月24日の前後には、例えば、八ッ場(やんば)ダム建設の自民党政権下での継続決定が大きく報じられ、2月7日にその本体建設工事起工式が挙行されている。また、九州電力、川内(せんだい)原発1号機の再稼働についても、大きく国民的な関心が高まり、結局、同原発は8月11日に再稼働された。
(注2)今田高俊氏「東京工業大学大学院『合意形成学』シラバス」2013年から引用。近代ブルジョア社会が樹立された「フランス革命」の(第一)共和制から200年以上経つが、人間は「合意」のためのルールを(裁判所以外の場所では)「問題が起きた、その都度」決めていたことになる。
(注3)今田高俊著「自己組織性 - 社会理論の復活」(1986)は、同年のサントリー学芸賞を受賞している。「自己組織性」とは、自己が自己のメカニズムに依拠して自己を変化させること、また、理論的には外からの影響がなくても自らを変化させ得ることである。今回の講演においても、氏は、組織に内在する創発的な秩序生成の一例であるとして、「社会編集」(後述)による合意形成を論じた。ちなみに、氏は、日本学術会議会員。紫綬褒章を、2008年に受章されている。氏が、2013年の第39回横幹技術フォーラムに登壇し、「組織活性化の条件」について「(今後の日本企業は)自律分散型の組織にならなければ、環境の変化への適応力を欠くことになる」と熱く講演されたのも、記憶に新しいところである。
講演の最初に、今田氏は「合意形成」を次のように定義した。合意形成は、ある事象に対して、その利害関係者(ステークホルダー)による意見の一致を図る過程である。特に、利害関係者(企業・行政・NPOなど、あらゆる組織・団体)の多様な価値を顕在化させ、相互の意見の一致を図るものである。
例えば、ダム開発についての反対者には、① 積極的反対者(反対運動を起こす人)と、② 消極的反対者(反対運動を起こさない人)の二つの立場があるという。積極的反対者のいる対立状況で、そこでの「合意形成」ができた状態、というのは、テクノクラート(注4)的立場からは、ある問題についての積極的反対者を、説得などの手段により消極的反対者(反対運動をしない人)に移行させることができた状態である、と氏は規定した。(注5)
そうした「政策的課題」が社会に存在するとき、つまり、積極的反対者を消極的反対者に移行させる必要がある、という状況が存在するときに、米国の社会学者、パーソンズ(注6)の構造機能分析の図式「AGIL図式」(あとで詳しく解説する)を再解釈することによって、「合意形成」に至る戦略を立てることができる、と氏は述べた。
(注4)テクノクラート(technocrat)とは、高度な科学技術の専門知識と政策能力を持ち、国家の政策決定に関与できる上級職技術官僚、または、同様の立場の有識者のこと。
(注5)本講演のプレゼン資料 8頁を参照。
(注6)タルコット・パーソンズ(1902 - 1979年)は、第2次大戦後、最も有名になった社会学者の一人である。A→G→I→L図式を用いれば、企業や大学、家族など、(社会システムの)何にでも、すぐにあてはめられて、その構造機能分析ができることを明らかにした。ちなみに、「AGIL図式」は、外部的(把握しにくいこと)/内在的(把握しやすいこと)、自分の意思で変えられること/変えられないことを示す4つの区切りから構成されている。
なお、今田氏は、「AGIL図式」を含めて、全部で三つの「合意形成」の方法について述べている。
そこで、ここでは、先ず(今田氏が用意された)本特別講演の全体構成を示しておきたい。
(方法・A)パーソンズの「AGIL図式」の4つの戦略である、便益の戦略、権力の戦略、説得の戦略、啓蒙の戦略(これらについては後述する)を、「合意形成」すべき事案の重大さに応じて活用すること。これが最初に紹介される。
(方法・B)ドイツの社会哲学者、ハーバーマスの言う「コミュニケーション的行為」(人間相互の了解、討議を通じた相互主観性の確認)によって「合意形成」を行なうこと。これが、その次に紹介される。
(方法・C)しかし、そもそも、「全員一致や多数決を前提にした合意形成」が無理な時代になってしまっているのだから、対立があることを前提に、個性的な差異を、そのまま関係づけてまとめるような「社会編集」としての合意形成を図ることが、最後に説明される。
そして、ここから、(方法・A)「AGIL図式」(社会システムの構造機能分析)について、氏は簡単に解説を始めた。
AGILには、次のような機能を当てはめて考えると、この図式が分かりやすく感じられることだろう。
パーソンズは、社会を、相互関連する要素からなるシステムと考えて、その社会構造を維持するために充足(満足)すべき要件を、図のようなAGIL(適応・目標達成・統合・潜在性)の4つの機能に図式化したのだという。
A機能(経済):社会システムの活動にとって必要な諸手段の調達と提供を担当
資金と便宜の調達と配分 ⇒便益の戦略
G機能(政治):社会システムの目標を有効に達成するよう集合的努力を調整する機能
行政的調整・政治的権力 ⇒権力の戦略
I機能(社会コミュニティ):社会的諸部門の貢献を調整し、協力関係を作り出す機能
司法裁定・社会運動 ⇒説得の戦略
L機能(家族・教育機関):社会システムの構成諸単位の望ましい関係を維持する機能
緊張処理・社会統制 ⇒啓蒙の戦略
従って、この図は、本来、「システムの構造機能を維持するために充足すべき要件」(目標)を整理したものであったのだが、今田氏はこれを「合意形成における方法」(手段)に「少し、ずらして」読みかえる事ができる、と述べた。そして、「便益の戦略、権力の戦略、説得の戦略、啓蒙の戦略」を、合意形成すべき事案の重大さに応じて利用できる、と指摘した。
例えば、ダム建設などの場合に、代替住居などの「便益」を提供する、「説得」を重ねる、その社会的必要性を「啓蒙」する、などの方法が主として用いられる。そして、それでも議論が対立して、地域住民などが合意への徹底抗戦を掲げている時には、強制力をともなう「権力」の行使が、国家権力(に進言するテクノクラート)の立場からは最も有効な方法だと言えそうだ。しかし、同時に、これは最終的な手段に他ならない、と氏は指摘した。(「いくら日本が、代議制民主主義の国家であるからと言って、3分の2の議席を国会で有する政党が、何でもできる存在だと考えている国民は少ないだろう」とも氏は付言した。)
つまり、合意形成のためには、便益、説得、啓蒙を通じて「賛同者を増やすための努力」が、そのプロセスとして必要であると、上記のAGIL図式を用いて氏は強調した。
さて、パーソンズの「便益、権力、説得、啓蒙による合意」の話はここまでで、次に、(方法・B)のハーバーマス(注7)の合意形成の方法に話題が転じた。
ハーバーマスは、人と人が、理性による対話を行ない、相互に言語的、コミュニケーション的に了解し合うことを、「コミュニケーション的行為による合意形成」と名付けて、重視しているという。そして、そこに参加している行為者の行為は、自己中心的な成果の計算(打算)によってではなく、議論を通じて、言葉によって調整されるべき、なのだそうだ。これを哲学的に表現すれば、「討議を通じた相互主観性の確認による合意形成を行なうこと」になるようである。
(注7)ユルゲン・ハーバーマス(1929年生まれ): ドイツの社会哲学者。コミュニケーション論や公共性論の第一人者。主著の「コミュニケーション的行為の理論」(1981年)や「公共性の構造転換」(1962年)は社会学の必読書とされ、訳書は古書店でも高値で取引されている。ハイデガー、ガダマー、デリダ、リオタール、ルーマン、ノルテ、ロールズらとの論争で有名だが、論争していた理由は、けんか早かったからではなく、生きている他者の反論を無視したモノローグ的な思想展開が嫌だという理由から、実際に相手とコミュニケイトして「了解」を得る相互主観的なコミュニケーション論を実践したからだ、とされる。
平たく言えば、「相互主観的な合意形成」というのは、互いにきちんと討議しあって、相互了解に到達する、ということなので、独我論(確信できるのは自分の存在だけ。他人のことは分からないとする理屈)に陥らないで済む合意の方法である、ということになる。今田氏によれば、ハーバーマスは、「社会における本来の合意形成は、了解志向的な行為による合意形成でなくてはいけないはずなのだが、近代社会では、まだきちんと、そうした合意形成が行なえていない。従って、まだ近代は始まってすらいないのだ」と言っているという。(理性で「合意」に至るまでのルールが、まだ確立されていないよね、という意味だろうか。)
ハーバーマスは、また、現在の社会システムについて、貨幣と権力という制御媒体によって「効率と合理性」の機能が優先されるというシステムが、生活者の生活世界を抑圧しているので問題だ、とも指摘しているそうだ。(金や権力で、無理を通してはいけない、ということだろうか。)
しかし、と、ここで今田氏は付け加える。互いの意見が平行線で、合意ができないという時には、そもそも先に進みようがない。ハーバーマスが、了解によって合意形成を行なうべきだとするのは、もっともな意見である。しかし、特に日本では、市民革命を経ていないので、理念によって社会意識や体制が変革されたという歴史が無い。また、(方法・A、B)のどちらも、合意内容が先取りされていることを前提にしているので、相互了解が不可能な場合、そこで話し合いが行き詰まる欠点があるというのだ。
そこで、今田氏は、「その先(行き詰まった先)の合意形成」として(方法・C)「差異の社会編集」を提言した。
その一つの例として、氏は「求同存異」(チウトンツンイ)という言葉を紹介している。これは、クリントン大統領と江沢民国家主席が、1998年に北京で開かれた米中首脳会談で「建設的戦略的パートナーシップ」を確認し、戦略核ミサイルの照準を相互に外すことを合意した際に、中国側から発表された会談のキーワードで、「違いは残し、共通点を求め、ともに未来を創造する」(小異を捨てずに大同を形成する)という意味であるという(注9)。つまり、言葉を変えれば、共生のための新たな道を生み出すために、システム全体の大儀や目的を優先して、個別問題部分の管理を避け、諸差異を関係づけた、ということになるのだそうだ。
(注8)事実、クリントン大統領と江沢民国家主席は、その首脳会談後の記者会見の場では、人権問題やチベット問題などで激しくやりあって見せたのだが、ある分野で意見を異にしても同じテーブルについて対話を維持する、という国際社会の合意についてのルールがここで確立されたのだという。
そこで、仮に、相互に脈絡を欠いてバラバラになった意見ばかりが対立している状況があっても、既存の(バラバラの)素材や情報を互いに関係づけ、独自の世界を編みだす「社会編集」(Social Editorship)という方法を用いれば、クリントン=江沢民のような合意に至ることができるはずだ、と氏は述べた。そもそも、「全員一致や多数決」を前提にすることは、もう無理な時代になってしまっているのだから、対立している個性的な諸差異(例えば、原発を認める/認めない、といったこと)に関する合意形成の条件としては、多数決でもなく、独創的なアイディアが出て来るのを待つのでもなく、「違いに敏感で感受性をもち、相違への権利を認め、違いに耐える精神」を用いた「社会編集」を行なうことによって、共生のための新たな道が生み出される、ことが期待される。そのことによって、社会に調和をもたらすことができるだろう、と氏は提言した。
ところで、今回の講演では、氏は、個別具体的な事例に関して、その社会編集の方法を紹介されなかったのだが、その「編集」は、古代ギリシャの都市国家ポリスにおける「アゴラ」(市民広場、市場や民会の場)で行なわれていた、対話による直接民主主義のような、利害関係者の相互了解による合意形成になるのではないか、と注目すべき指摘を行なった。
また、 コーディネータやファシリテータについても、氏は言及した(注10)。住民の本義にもとづいた市民社会の討議と、それらをまとめるプロセスである「社会編集」の渦巻きによって、町、地域、国へと合意形成が積み重ねられてゆくことが今後行なわれ、そのプロセスに、コーディネータやファシリテータが参加して、結論をいくつかの類型に整理することも行なわれるだろう、と氏は述べた。
(注9)ファシリテータとは、学習や気づきを促進する教育スタッフのこと。ここでは、利害関係者の相互了解による合意形成のために、論点を整理することができる社会編集者を指す。なお、これまでの横幹技術フォーラムで取り上げられてきた「ファシリテータの役割」や「合意形成」については、次の(注10)を参照のこと。
氏は、最後にもう一度、「社会編集」こそが合意形成の最も有力な理論であり、今後その理論的な彫琢が期待されると改めて強調して、社会理論の新しいテーマ「合意形成」についての印象的な講演を終えた。
(注10) 横幹技術フォーラムでは、これまでに何度か、「ファシリテータが協働することで、ステークホルダー(利害関係者)が合意に至ることができる」という趣旨の重要な講演が行なわれてきた。(以下にご紹介する手法についての今田氏からの言及は、行なわれていないのだが、)本講演の主要な結論である「社会編集」についての議論を豊かに彩ると思われるので、ここにまとめて掲載しておきたい。
「第41回横幹技術フォーラム」(総合テーマ「社会的課題解決のためのイノベーション ~社会システムとしての街づくり~ 」)では、社会システムデザイナーの横山禎徳氏(東京大学特任教授)が、中国の都市を評価するための「グリーンアーバナイゼーション評価指標」(中国国家発展和改革委員会と日本の環境省の協力で作成)について、その基本思想と構造を説明した。これは、今後の中国の都市化政策において、どのような都市開発の方向性が、すべてのステークホルダーにとって、より望ましいか、という「指標」を作成したものである。とりまとめに当たった横山氏は、社会システムデザイナーの立場から、「全体を統括する思想」「果たすべき使命」を最初に議論し、その安定した土台の上に次の「行動指針」を重ねることで、指標が作成できたという。すなわち、そこは「住みやすい都市か」「長持ちする都市か」「周りに貢献できる都市か」ということを示すいくつかの行動指針を、都市化の方向性として合意形成することができたそうだ。
また、同フォーラムで、横山氏は、ご自身の福島第一原発「国会事故調」委員としての経験から、「日本の原発は再稼働に向かい始めたのだから、『推進かゼロか』といった無責任な議論を繰り返すのではなく、社会システムとしての現実的な解決策が用意されるべきである」と強調した。具体的には、多様な専門家が「ファシリテータ」として住民に助言して、素人の住民がイニシアティブを取り、(そしておそらく、古代ギリシャの直接民主主義のような「コミュニケーションによる了解」が行なわれて、)地震や火山の噴火などに際しての住民の避難経路、原発の耐震化、原発の多重防護、放射能汚染物質によるガン発症の危険や「アスベスト」による中皮腫などの、現在懸念されている原発に関する様々な問題が解決に向かうだろう、とする提言である。詳しくは、 第41回横幹技術フォーラム (No.039, Nov 2014) を参照して頂きたい。
また、「専門家と市民の協同(協働)による問題解決」として、「多重リスクコミュニケータという ITシステムによる組織内合意形成」や「科学技術コミュニケーションのための参加型シミュレーション」、そして、経済産業省の「オープン経済産業省twitter」などが、第28回横幹技術フォーラム (No.024, Jan 2011) 「将来社会創造アプローチの展開(2)~市民との対話による構想立案~」の中で紹介されている。多様な専門家の助言を住民などにアウトリーチして合意に至る手法として、参考になるだろう。
その他に、「エージェントベース社会システム科学」という手法が注目される。現在は、「金融市場の制度デザイン」研究などの分野で目立った成果を挙げているそうだが、「社会の制度設計やビジネスの組織目的を達成する『社会デザイン』においては、社会や組織の利害関係者が介入操作できるような水準で、その設計案のモデルやシナリオを、きちんと構築しておくように考慮するべきだ。そうすれば、① それぞれの設計案のシナリオが抱える将来のリスクを、利害関係者自身が自律的に解析できて、比較参照することが可能になり、② 将来の不確実性に、利害関係者自らが対処できるので、③ 所与の目的を達成することができる。そのような制度設計のデザインが、エージェント・シミュレーションによって実現可能になるのだという。合意形成のツールとして、素晴らしいものではないだろうか。詳しくは、第40回横幹技術フォーラム (No.038, Aug 2014) を参照して頂きたい。
以上に挙げたような、専門家と住民(素人)の協働による問題解決の取組みについては、様々な分野からの要請が現実にあるのだという。例えば、「フューチャーアース」という活動においては、(この種の国際研究には珍しい事であるが、)学術の専門家だけではなく、社会のさまざまなステークホルダーが参加することも期待されているそうだ。具体的には、その分野の専門家とステークホルダーが協働して、研究活動の設計Co-designや、研究知見の創出Co-productionを行うとされている。そして、Future Earthの主要なステークホルダー・グループとしては、次の8つが特定されているそうだ。(1)学術研究(Research)、(2)科学と政策のインタフェース(Science-Policy Interface)、(3)研究助成機関(Funders)、(4)各政府機関(Governments)、(5)開発機関(Development organizations)、(6)ビジネス・産業界(Business and Industry)、(7)市民社会(Civil Society、NGOs etc.)、(8)メディア(Media)。
上記の、横山氏の講演などを参考にして考えると、「フューチャーアース」では、専門家がファシリテータになって、特に、上記(6)(7)(8)に対して適切な情報提供を行なうことができる。もしかすると、それによって環境政策に対する税金投入の社会的な合意が形成される、といった状況も生まれるかも知れない。また、そうした合意形成を実際に試みる際には、例えば、横幹技術フォーラムで、専門家から(6)へのアウトリーチがこれまで行なわれて実績がある、といったこともまた、参考にできるのではないだろうか。
いずれにせよ、横幹連合では、文系、理系の両面からの議論を深めることが可能である。合意形成の地平を探るためには、非常に適した環境ではないだろうか。
(本文と注釈の文責: 編集室)