「社会情報学」とは、(1)「情報」という視点から、社会システムに関する理論の枠組みを再構築する、(2)新しい情報/コミュニケーション・ネットワークと社会システムの関係を探求する、という特徴をもった、新たな学際的学問領域です。インターネットが日常的に使われている時代にあって、「情報とは何か?」「情報技術の進展は、人間関係や社会の構造にどのような変化をもたらしつつあるのか?」「望ましい社会のデザインは何か?」といった根幹的な問いに答えようとしています。対象とする問題を体系的に位置づける「基礎理論」、対象とする現象を客観的に記述する「実証・分析」、問題解決のための「具体的な実践」という3つのアプローチが、互いに互いのエンジンとなって、「社会情報学」という全体を前進させています。
この学会について、会長の遠藤 薫先生(学習院大学)にお話を伺いました。
Q:1985年に創設された日本都市情報学会が96年に現在の名称となったそうですが、研究対象が広がったことで学会の名称を変えられたのですか。
A:そう言ってもいいかもしれません。「情報」という切り口からの分析は、「都市」システムだけではなく、「社会」システム一般に応用できるという考え方が広まったからだと思います。そうして、個人と社会(国家)の係わりという統一的な分析や実証がむつかしい対象にも、多様なモデリング手法などが提供できるようになってきました。そのことから、社会科学と自然科学が歩み寄って、互いに理解しあえる機会も増えたように思います。会の名称が変わったことには、そうした背景もあったと思います。
Q:「これは任せてほしい」という分野は、強いて言えばどのあたりでしょうか。
A:学会誌の目次をご覧になればおわかりになると思いますが、幅広い対象が扱われています。そうですね、強いて言えば、シミュレーションやゲーム理論などを使って、社会政策などの施策にさまざまな選択肢を提供したり、その予測される結果を実証的に推理・推論できるというのも、社会情報学の特長かもしれません。そうすることで、より良い施策が選択される可能性も増えるだろうと思われます。
学会誌について言い添えますが、幅広い対象を扱っておりますが、どんな内容でも、それぞれの専門家によってきちんと査読されています。それは、本学会の誇りなのです。
Q:長野の第1回横幹連合コンファレンスに参加されて、どういった印象を持たれましたでしょうか。
A:43もの学会が集まったのは、すばらしいことですね。最初の一歩として貴重なコンファレンスだったと思いますが、今後は社会科学系の発表も、もっとあって良いように感じました。日本社会情報学会では、社会科学と自然科学の相性が良いので、こうした面からも貢献していけたらと考えています。でも、さまざまな分野の方が聴講しておられたので、詳しい説明をするためにも、発表の時間がもう少し長くほしかったですね。 |