横幹連合ニュースレター
No.013, Apr. 2008
<<目次>>
■巻頭メッセージ■
柔軟な発想とコミュニケーション力
藤井 眞理子 横幹連合理事
東京大学
■活動紹介■
【参加レポート】
●第17回横幹技術フォーラム
■参加学会の横顔■
●日本情報経営学会
●日本生産管理学会
■イベント紹介■
●これまでのイベント開催記録
■ご意見・ご感想■
ニュースレター編集室
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横幹連合ニュースレター
No.013 Apr. 2008
◆参加学会の横顔
毎回、横幹連合に加盟する学会をご紹介していくコーナーです。
今回は、日本情報経営学会と日本生産管理学会をご紹介します。
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日本情報経営学会
ホームページ: http://wwwsoc.nii.ac.jp/oa/
会長 高桑宗右ヱ門 氏
(名古屋大学 教授)
【組織、情報、社会の情報的相互作用の研究】 1979年に設立されたオフィス・オートメーション(OA)学会は、「オフィス・オートメーション」という概念のもと、オフィスシステムそのものに留まらず、経営システム、企業システム、そして経営情報システム、社会情報システムなどの各種の情報システム現象を、理論的・実践的に研究する学際的な場として活動を行っています。経営学を基軸として学際的な情報システム論的研究を掲げたわが国では最初の学会であり、日本学術会議第3部会の所属学会として、この研究領域で一貫した中枢的役割を担ってきました。しかし近年の情報化の進展は、より広範な研究を必要としており、2007年より「日本情報経営学会」と名称を変更して、新たなビジョンの下に活動を続けています。
この学会は「公企業その他組織体の健全な発展、およびそれら組織体の運営主体である人間の健全な成長」を研究の二軸としています。とりわけ、情報のもつ包括的、連続的、創発的な機能や役割の支援や助力を得て、これら二軸における優れて相補的な関係性の実現に資することを、使命と考えています。
この学会について、会長の高桑宗右ヱ門先生(名古屋大学)にお話を伺いました。
Q この学会は「経営学を基軸として学際的な情報システム論的研究を掲げたわが国最初の学会である」と伺っております。私はCOBOLのプログラミングをやっておりましたので、80年代の初頭、ビジネス誌の表紙に「オフィス・オートメーション」という文字を目にしたときには心が躍りました。当時の書籍や雑誌は、今でも大事に持っております。
この学会の歴史と今日の役割について、お聞かせ下さい。
高桑会長 経営学に軸足を置いて、社会科学だけでなく自然科学、人文科学の立場から、社会、経済、経営、情報システム、組織、技術などを幅広く捉えているのが、この学会の基軸です。それから、例えば、私自身がかつてFA(Factory Automation)を研究対象としていたことからも明らかなように、「文系と理系の融合(統合理論の構築)」が当初から、明確に指向されてきました。
学会の歴史には、大きな発展のきっかけが二つありました。1980年のFA元年(産業用ロボットの展開)と、95年のパソコン元年(Windows95の発売)がそれです。80年代には、学会誌の特集でもパソコンやワープロなどのOA機器を個別に取り上げることが多かったのですが、やがてOA機器が一般にも普及したことから、高品質な情報特性、問題の発見、環境検索、意思決定支援などが、固有の情報システム構築に欠かせない分析や考究の対象となりました。これらは、企業の情報システムがIT戦略を融合し、組織の縦割りを廃して、スピーディなビジネスによる競争優位を図っていることに応じた変化です。更に、経済学的な分析、社会システムの観点からの検討、環境システムへの提言を行うことなど、社会科学、自然科学、人文科学にまたがった広い視点からの研究を本学会は行っています。
文系と理解の融合、社会システムへの政策提言の指向などは、横幹連合の目指す方向とも合致しているようですから心強いですね。現在の会員数は、約800数十名です。
Q
高桑会長の研究分野とこの学会の関わりについて、お聞かせ下さい。
高桑会長
東洋大学名誉教授の(故)涌田(わくた)宏昭先生(経営情報学)が中心となり、本学会は設立されました。私は、学会設立直後に同大学の助教授として赴任し、学会誌の編集や大会の準備に忙しく奔走することになりました。前会長の遠山暁先生とも、同じ時期を東洋大学で過ごしました。
私はもともと、FA(現在では概念が拡張されてCIM [Computer Integrated Manufacturing] と呼ばれています)の研究者だったのですが、この学会に関わったことで研究領域が更に広がり、特にOAとFAの接点について多くを学ぶ事ができました。「イミダス」(集英社の現代用語事典)のOA・FAの項目も、当時、涌田元会長と共同で執筆しました。
現在は、企業のサプライチェーンや、大規模システムのシミュレーション、リスクマネージメントなどを研究しています。例えば、ある日系企業が中国の広い国土に生産工場や流通センターを展開しているのですが、私はその企業の在庫管理のシミュレーション・モデルを構築したり、ある大学病院の救命救急センターの患者の流れなども分析したりしています。
また、学会の活動からは少し離れますが、名古屋大学の国際経済政策研究センター長として、中国、韓国、タイ、ベトナムなどの研究者を招聘して、積極的に共同研究を行ってきました。この他にも、米国の大規模な国際会議であるWSC(Winter Simulation Conference)に研究室を挙げて出かけ、これまでに20件あまりのシミュレーションに関する論文を発表して大いに気を吐いています。
Q
今後の学会の方向について、お聞かせください。
高桑会長
日本情報経営学会の大会の記録などをご覧になれば分かる通り、学会員の研究の方向は、多岐にわたっています。また、全国の支部、研究部会も、非常に活発に活動しています。個別企業の経営情報システムの研究などは、もちろん今後も重要なのですが、それだけに留まらず、経済、産業、社会などの種々のシステムも視野に入れた政策提言、さらには環境問題の解決に向けての提言なども、この学会の重要な役割ではないかと考えています。
これにちなんで、海外の事例をご紹介しますと、中国では政治家のトップが自ら学会の論文を読んで、興味を持った場合には敬意をはらって執筆者に説明を直接求めたりしています。この国でも、こうしたことが当たり前になると嬉しいですね。そうなれば社会に対する学会の役割・使命も、いっそう大きなものになるだろうと思います。
また、学会として、国際会議をほぼ4年に一度行ってきましたが、中国、オーストラリア、韓国など、東アジアを中心とした交流が活発になり、内容も充実してきました。今後の国際経済の動向とも相まって、グローバルでユニークな研究がこれからも期待できると感じています。
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日本生産管理学会
ホームページ:http://www.e-jspm.com/
会長 児玉 正憲 氏
(九州大学名誉教授・広島修道大学名誉教授)
【生産管理における理論と実践の融合を目指す】 日本生産管理学会は「経営活動の一環としての生産管理論の研究および教育、ならびに生産管理実務の指導・改善の発展を図るとともに、会員相互および関連学会・会員との連絡・研修の場となること」を目的として、1994年に創設されました。
現今、日本企業は生き残りをかけたグローバル生産を展開しており、デジタルエンジニアリングを活用した「生産管理技術の進化」が著しい中、世界をリードできる日本独自の経営技術の原理や、次世代に通用する生産管理技術の再構築が求められています。
こうした目的のため、毎年の大会や研究会、生産管理に関する図書、報告書の発行などを精力的に行っているのが、日本生産管理学会です。
この学会について、会長の児玉正憲先生にお話を伺いました。
Q
生産管理の実務に立脚しておられることから、 研究者と産業界の間に位置されているという、これは横幹協議会の桑原会長が、常々「望ましい」と強調しておられる役割を、正に実践されているように感じます。この学会の特色を、お聞かせ頂けますか。
児玉会長
当学会は、経営学の一環としての生産管理の理論と実践の融合を目指しています。そして、例えば、会員に占める理論畑の研究者と現場畑の実務者が半数ずつだというところにも現れていますが、日本の企業経営を最も大きな部分で支えている製造業の実際の生産現場における、最も進んだ生産管理技術の実践の理論化とその普遍化に、力を注ぎ続けてきました。
こうした理論の構築と実践の場で、研究者、教育者、実務者が、相互に交流、研鑽することが、これからも日本の活力につながって行くと考えています。
生産現場の話をすると分かってくれる人たちの一番多いのが、この学会の特徴ではないでしょうか。そうした意味からは、もっと早くからあって然るべき学会であったとも言えるかも知れません。
また、全国に6つある支部や多数の研究部会の活動も大変に活発で、こうした場所で研究されたテーマは、さらに大会でも発表されて普及に努めております。
大会は年2回開催され、全国大会講演論文集と年3回の定期刊行誌「生産管理」を発行しています。この他に、英文の学会誌を年1回刊行する準備を、現在進めています。その他、多数の図書を刊行し、とりわけ「生産管理ハンドブック」(日刊工業新聞社)や日本規格協会から刊行されている生産管理に関係する十数冊の書籍は、非常に重宝されています。
Q
会長ご自身は、どのような経緯でこの学会と関わられたのでしょう。また、ご自身のご関心について、お聞かせ下さい。
児玉会長
私は、元は信頼性工学など、ORの分野の出身で理科系でした。1979年に新設されて間もない九州大学経済学部、経済工学科に赴任してから、「不確実性下における動的な在庫管理モデルの構築」などに取り組みました。数学的なモデル化が、主要な研究領域です。その後、広島修道大学経済科学部に移り、経済学と情報科学、システム科学の融合に尽力してきました。
澤田善次郎先生が製造業の現場の生産管理実務から切り拓かれて立ち上げられた日本生産管理学会を、自分の特色を生かして、2代目の会長として発展させたいと考えています。
特に、これから研究者として巣立つ人たちの成果が出やすくなるような環境を整えて人材育成を図ることや、グローバル時代を見据えて海外の技術者・研究者との交流を深め、日本の進んだ生産管理技術を海外に技術移転して行くことなどにも力を注ぎたいと考えています。
Q
今後の学会の研究動向、会員の皆様のご関心などを、お聞かせ下さい。
児玉会長
今後は、サービス産業における生産管理の技法の実践と理論化が望まれていると考えています。これは、横幹協議会からもその成果が大変に期待されている分野である、と伺いました。それから、企業の社会的責任(CSR)やリスク管理も重要な研究テーマになってくることでしょう。
先にも述べましたが、グローバル時代の国際協調と人材育成もやはり重要です。
研究開発や生産管理技術の理論化に関しても、重要な分野がいくらでも残っています。その一例として、SCM[注1]も、今後の更なる理論化が必要だと考えています。
そして、生産管理を「生産経営」へと脱皮させることです。そのようにして、第二次産業の視点から「生産経営学」を確立し、さらには第一次産業や第三次産業にもそれを普及させてゆくという試みが、何よりも必要なのだと感じています。
会員の皆さんのご研鑽によって、全国大会や学会誌の論文が質的に向上することにより、「ものづくり最前線」の先進企業の実務家の入会が促され、学術研究のレベルもより一層深まるものと期待しています。
[注1] SCM(Supply Chain Management):発注、資材調達から在庫の管理、製品の配送まで、つまり事業活動の川上から川下までを総合的に管理して、余分な在庫などを削減し、コストを引き下げること。
(注釈文責:編集室)   
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