横幹連合ニュースレター
No.018, July 2009
<<目次>>
■巻頭メッセージ■
人あるところに横幹あり
西村 千秋
広報・出版委員会委員長
東邦大学
■活動紹介■
【参加レポート】
●第19回横幹技術フォーラム
■参加学会の横顔■
●システム制御情報学会
■イベント紹介■
■ご意見・ご感想■
ニュースレター編集室
E-mail:
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横幹連合ニュースレター
No.018 July 2009
◆参加学会の横顔
毎回、横幹連合に加盟する学会をご紹介していくコーナーです。
今回は、システム制御情報学会をご紹介します。
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システム制御情報学会
ホームページ: http://www.iscie.or.jp/
会長 太田有三 氏
(神戸大学 教授)
【システム・制御・情報の3分野を横断する】
システム制御情報学会(略称ISCIE、アイサイ)は、1957年に「日本自動制御協会」の名称で設立されて以来、長年にわたって、制御工学、およびシステム工学に関する学術と技術の向上を目指し、産・学・官が一体となった活動を続けてきました。この分野に関して、わが国で最も伝統ある学会です。
最近、制御工学やシステム工学においても、計算機応用をはじめ、情報関連技術の需要が急増しています。しかし、今日のソフトウエア技術がこの需要を必ずしも満たしているとは、いいがたい面があります。これに対処するために、システム、制御、情報関連の研究者と技術者がそれぞれのノウハウを結集させ、ニーズとシーズの整合を図りつつ、ソフトウエア技術の理論的体系化、ソフトウエア産業の生産性向上など、将来を見越した課題に取り組むことが強く望まれています。
このような時代の要請に応えるため、上記「日本自動制御協会」は、88年6月に「システム制御情報学会」と名称を変更し、その事業を更に充実させることになりました。本学会は、会誌「システム/制御/情報」および論文誌「システム制御情報学会論文誌」の発行と、システム制御情報学会研究発表講演会(SCI)と二つの国際会議、および自動制御連合講演会の開催、研究分科会活動、研究交流会活動への支援などによって先端的な学術振興を図るとともに、チュートリアル、セミナー、講習会、オープンセミナーの開催、企業交流会の実施、マルチメディアライブラリーの発行などによって、産業界の技術向上にも寄与しています。
この学会について、会長の太田有三先生にお話を伺いました。
Q 太田会長は、本学会を非会員にご紹介されますときに、どんな風に「こんな学会です」と、説明しておられますでしょうか。
太田会長 システム制御情報学会は、当初は「日本自動制御協会」として、57年に創立されました。自動制御に関して、わが国初の学術団体です。協会の創立と同時に創刊された協会誌名も「制御工学」でありまして、この分野を中心に活発な活動を行ってきました。
ところで、「日本自動制御協会」には、更に原点がありました。52年に結成された「京都大学自動制御研究委員会」という名の、大学の研究者と産業界の専門家が月に一度集まって知識の交換と問題解決を図っていた組織でした。関東の「東京大学自動制御研究会」とともに、わが国におけるこの分野の理論と応用研究をリードしてきました。
やがて、製品の多様化や品質管理へのニーズの高まりなどの社会情勢に対応して、71年に協会誌の名称「制御工学」を「システムと制御」に改題し、制御工学と共にシステム工学の分野を含めるようになりました。やがて、広く情報分野もカバーするようになり、88年に学会名を現在の「システム制御情報学会」に名称変更するとともに、会誌名も「システム/制御/情報」に改題しました。本学会における情報分野についての活動は、特に、信号、画像処理を中心に行われてきています。
現在の活動としましては、(学会名そのままに)「システム、制御、情報」をキーワードに含んでおります、理論と技術、応用などの発展、向上を目指しています。
ここで、現在の本学会のキーワードを整理しますと
システム理論・システム技法・応用システム解析、知能システム・進化システム、
システム・制御・情報技術の実際応用、制御理論・制御技法・制御応用、
計測・センシング・制御機器、コンピュータ・情報処理・情報ネットワーク、
などが挙げられます。このように非常に広範な分野の種々の課題を、横断的に解決しようとする研究者、技術者に、交流の場を提供しているのが本学会です。
ところで、学会誌の「創立50周年記念特集号」(2007年1月号)の中に、創立時から協会の中心におられた椹木義一先生が、本学会の活動領域の広がりについて、次のように書いていらっしゃいます。
「最初は単一ループのフィードバック制御に始まり、ついでフィード・フォワード要素の取り入れ、多変数・多重ループ系と、いわゆるシステム制御に変わってゆき、そのループの中には進歩の激しいIT技術が導入されることとなり、遂には人間が、もろにそのループに関与することになった。最初の自動制御が、そのループの中から人間を除くことに始まったことを考えると、まったく隔世の感がする。」
このように本学会は、それぞれの時代の最先端の課題に、ダイナミックに取り組んで来ました。
そうした学術振興活動と併せて、啓発的な活動にも力を注いでおり、出版物(図書)の他に「マルチメディアライブラリー」を発行しております。システム・制御・情報分野のテーマに関する体系的な講義やオープンセミナーの記録などを、ビデオまたはDVDに収録したものです。歴史的にも貴重な講義が含まれており、企業の中での教育にも最適な内容です。
Q
太田会長のご研究の概要を、ご説明下さい。また、会長はどんなきっかけで、この学会に入会されたのでしょう。
太田会長
私の研究分野がシステム理論・制御理論でしたので、本学会や計測自動制御学会には、入会することが当然のように考えて入会しました。
ただ、今から考えますと修士の学生の頃に、児玉慎三先生と須田信英先生による講義「制御工学者のためのマトリクス理論」が協会誌に30回に渡って連載され、毎回新しい記事が出るのを楽しみに待っていました。研究室にいた学生全員が読んでいたことを、覚えています。教科書では少ししか触れられない制御理論の考え方が、非常に詳しく書かれていて、大変参考になりました。そうしたことなどから、当時の「システムと制御」誌に非常に魅力を感じていたことの影響も、あったと思います。私の大学には当時博士課程がなかったので、大阪大学の児玉先生の研究室に進みました。
それ以来、 私自身はシステム理論・制御理論の分野で研究を行ってきましたが、最近は、計算機の能力を活かした制御にも興味を持っております。また、それに関しまして、計算幾何学を制御に応用するためのツールとして、複素平面における多角形に対する、和、積、逆集合の演算、和集合、積集合(共通部分)、差集合などの計算のソフトウェアや、多次元空間における凸多面体に関する演算のためのソフトウェア、などを開発してきました。
申し込んで頂ければ、ご希望の方にこれらのプログラムを差し上げております。もう少しソースコードが整理できた段階では、公開したいとも考えています。
Q
今後の本学会の向かわれる方向、会員の皆さまのご関心などについて、お尋ねしたいのですが。
太田会長 本学会はこれからも、研究発表講演会の開催や研究分科会活動などにより先端的な学術振興を図ると同時に、啓発的なセミナーなどを開催し、「システム、制御、情報」をキーワードに含む、理論・技術・応用などの発展・向上を目指して活動して参ります。
一例ですが、本学会では、84年に「国際フレキシブル・オートメーション・シンポジウム」(ISFA)が大成功したことを受けて、86年から「日米フレキシブル・オートメーション・シンポジウム」(JUSFA)を日米交互に、隔年に開催してきました。21世紀のための技術革新に関する国際会議です。ここでは、柔軟性、知能、リードタイム削減などに加えて、機敏さ、再構成可能性、CAD/CAMのネットワーク化、ヘルスモニタリング、セキュリティ、センサー・アクチュエータ技術、環境保護などの最新の課題が議論されています。
もう一つの国際会議として、早くから椹木先生を中心として、非線形要素を含みかつ不規則雑音が介在するシステムの研究がなされておりましたが、この研究会が、椹木先生、砂原義文先生の尽力で「統計学的制御理論シンポジウム」(68年)として結実したのを受けて、75年から「確率システムシンポジウム」を続けて参りました。85年からはこれを国際化して「確率システム(ストカスティックシステム)シンポジウム」(SSS)という国際会議を、(その第2回目以降)毎年秋に行っております。
「確率システム」をメインテーマとした会議としては世界的にもユニークなもので、最近では金融工学などの数理ファイナンスも包含されるようになりました。SSSは、今では各分野で第一線の研究者として活躍されている先生方の、いわば登竜門になってきた伝統的なシンポジウムでもあります。今秋には第41回のシンポジウムが、甲南大学で行われます。
どちらの国際会議も、本学会を特徴づける非常に重要な会議ですが、これらと国内の「システム制御情報学会研究発表講演会」(SCI)、「自動制御連合講演会」の開催、研究分科会活動、研究交流会活動への支援などによって、本学会は先端的な学術振興を図っております。学会の研究が特定の方向に向かっているかどうか、ということについては、国際会議で発表されるテーマやオーガナイズドセッションのタイトルが参考になることでしょう。
ともあれ、本学会のカバーしている分野が非常に広範で、会員の皆様の関心も多岐にわたっておりますので、その特性を活かして、様々な課題を横断的に解決することができるような有機的な会員相互の交流の場を提供してゆきたいと考えています。また、そのための種々の企画を、工夫したいと思います。
本学会には、これまでも産業界と学界をつなぐ役割を意識して行ってこられた会長がおられましたが、私もまた、そうした会員相互の交流の場に、大学、公的研究機関の方々が参加されるだけではなく、企業・産業界からも、より積極的な参加が行われるようにできればと考えています。
企業からの会員を増やすことは、さらなる技術革新を行うためにも非常に重要な課題です。SCI には、昨年から産業応用のオーガナイズドセッションを積極的に企画して頂いております。ここしばらく経済環境に関しては厳しい状況が続いておりますが、若手技術者に未来への夢とロマンを懐いて学会活動に積極的に参加して貰えると、嬉しく思います。
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