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横幹連合 広報・出版委員会
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武田 博直室長(セガ、日本バーチャルリアリティ学会)
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横幹連合ニュースレター

<<目次>> No.027 Oct 2011

巻頭メッセージ

活動紹介

参加学会の横顔

 
「サービスサイエンス

横断型科学技術」
*
横幹連合理事
北陸先端科学技術大学院大学
知識科学研究科長
小坂 満隆
 
 第31回横幹技術フォーラム
 
【横幹連合に参加している
 学会をご紹介するコーナー】
 
日本品質管理学会

イベント紹介

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第4回横幹連合コンファレンス
これまでのイベント開催記録
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巻頭メッセージ

サービスサイエンスと横断型科学技術

  小坂 満隆 横幹連合理事

北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科長

 「21世紀のイノベーション創造に向けた知の統合と知の創造」というテーマで、本年11月28日、29日に第4回横幹連合コンファレンスが、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)で開催されます。私は、コンファレンスの実行委員長を務めています。知の統合については、いろいろな領域や技術分野に「空間的」に広がってゆく知の統合という側面に加えて、(昔から受け継がれてきた)伝統的な知と(最先端技術を活用した)最新の知との、時代を超えて響き合い、再解釈され続ける、「時間的」な広がりを示す知の統合という側面もあると思います。加賀という伝統文化の地で、横断型科学技術の研究者が一同に集い、知の統合や横断型科学技術の意義について議論できますことを心から期待しています。

 私と横幹連合のかかわりは、計測自動制御学会(SICE)の理事を務めていた2001、2002年度に、当時の木村英紀SICE会長が、「横断型科学技術の重要性と研究・教育の強化」について力説されたことに、強く共感したことから始まりました。
 当時、私は日立製作所システム開発研究所に所属して、システム・情報技術についての研究開発とその実ビジネスへの応用を進めておりました。そのことから、従来のタテに細分化された研究開発の要素技術の成果が実システムの中で活かされるためには、システム開発技術に代表される横断型の科学技術が重要で、俯瞰的な視点と様々な技術の(正に)知の統合が必要である、と常々感じていたからです。そこで、木村先生が進めておられた横幹連合設立の活動に私も参画して、文部科学省への説明などを行いました。こうした思いを持った多くの方々の活動が、2003年の横幹連合の発足に結びついたのだと思います。その後、2006年に、横幹連合の調査研究会としての「システム工学とナレッジマネジメントの融合」調査研究会(シスナレ研究会)を、中森義輝教授(JAIST)ら関係者と立ち上げて、現在まで3期にわたって継続して活動中です。2010年度からは、横幹連合の理事を務めています。

 さて、私は2008年にJAIST の知識科学研究科に移り、縁あってサービスサイエンスの教育・研究を始めました。サービスサイエンスはIBMが中心になって提唱したもので、21世紀にはサービスが、情報産業や製造業などの様々な業種において、いっそう重要になるとして、サービスを科学することの必要性が強調されました。
 従来の製品ビジネスでは、「製品の性能や機能を向上することが、(そのまま)顧客にとっての価値の向上につながる」と考えられてきましたが、サービスの視点からは、「顧客にとっての価値は、顧客がそれを利用する時に初めて形成され、同じ製品やサービスでも、それが利用される状況や顧客の特性によって、顧客にとっての価値が異なる」と見ることができます。つまり、サービスサイエンスにおける「サービス」の捉え方は、「顧客とサービス提供者が、サービス価値を共創する」というものになるのです。これをシステム論的に考えると、「顧客の(利用)目的を達成するための、顧客(人)を包含したシステムの最適化」である、と捉えることができます。そして、サービスを、このように「サービスシステム」と捉えることによって、これまでに確立されている様々なシステム技術を、ここに応用することが可能になります。更に、人を含むという点で、ナレッジサイエンス(知識科学)を初めとする人に関する科学技術を、このサービスシステムに取り込む必要も出て来るのです。
 そういう点では、我々が2006年から始めたシスナレ研究会の活動は、「システム工学」と「人に対する科学」の融合を狙ったものであり、サービスサイエンスに関する技術的な基盤を提供するものだと言えるでしょう。そこで、シスナレ研究会のメンバーを中心にして、私と舩橋誠壽さん(横幹連合事務局長)が編者となり、木村先生に巻頭言を書いて頂いて、2010年に『横断型科学技術とサービスイノベーション、人を包含したサービスシステムに対するシステム論的アプローチ』(社会評論社)を出版しました。おそらく、国内における横断型科学技術に関する最初の書籍ではないかと自負しています。このように、横幹連合での様々な活動は、私のJAISTにおけるサービスサイエンスの教育・研究の大きな支えにつながっています。

 いまや、サービスサイエンスが活用できるビジネス領域は、ホテル・旅館などの旅行業、流通業といった従来からのサービス業部門ばかりではなく、情報産業、製造業、知識産業などの数多くの分野に広がっています。ここでの新たなサービスの創造には、情報・通信技術、システム技術、脳科学、心理学、マーケティング技術などの様々な領域の技術が必要です。サービスを、人を包含したサービスシステムと捉えることによって、そこには横断型科学技術の考え方が必須となり、この領域の科学技術を今後どう発展させていくかについては、将来のわが国の産業競争力にも大きな影響を与えることになるでしょう。
 サービスサイエンスの持つ性質は、従来のような、一つの技術領域や一つの産業分野に焦点を当てて、これを深く掘り下げるというアプローチでは結論の得られない科学技術であることを示しており、いろいろな学会や産業が連携することの重要性を示唆していると思います。横幹連合が、こうした学会連合、産業連携の中心的な存在として大きな発展を遂げるように、私も微力ながら貢献して行きたいと考えています。

 

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