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■横幹連合
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横幹連合ニュースレター

<<目次>> No.031 Nov 2012

巻頭メッセージ

活動紹介

参加学会の横顔

 
「経営高度化に対する横幹的アプローチ」
*
大場 允晶 横幹連合理事
日本大学 教授
 
 第4回横幹連合総合シンポジウム
 
【横幹連合に参加している
 学会をご紹介するコーナー】
 
日本MOT学会

イベント紹介

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2013年度 第5回横幹連合コンファレンス
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巻頭メッセージ

経営高度化に対する横幹的アプローチ

  大場 允晶 横幹連合理事

日本大学 教授

  11月1‐2日に日本大学生産工学部で、第4回横幹連合総合シンポジウムが開催されました。印象深い遠藤薫先生(学習院大学)の基調講演1「間メディア社会の多面的様相−コミュニケーションの未来予想図」と村田潔先生(明治大学)の基調講演2「ユビキタス時代の倫理的課題−豊かな社会を目指して」、そして横幹連合による震災克服企画の3セッション(A:生活における社会の強靭性強化、B:経営の高度化と強靭性の強化、C:環境保全とエネルギー供給における強靭性の強化)を伺い、横幹的なアプローチの重要性を特に感じました。また、私の関係する経営高度化のテーマでは、4セッション(経営高度化1:次世代の業績評価法と意思決定、経営高度化2:経営高度化の様々な側面、経営高度化3:経営高度化への挑戦−グローバル企業における現状と課題−、経営高度化4:経営の高度化と強靭性の強化)、合計15件の招待講演を行いました。ここでは、巻頭メッセージの場をお借りして、「経営高度化のための横幹的アプローチ」について、私見を説明させていただきたいと思います。
  経営の高度化とは、目まぐるしく変化する経営環境に素早く対応できる経営手法を、経営者に対して支援することです。ネットで海外から商品を調達、あるいは販売することで、海外に市場を求めるグローバリゼーションが進展し、ムーアの法則に従って急速にコンピュータ環境が指数関数的に進歩するような情報化が進んだ現在、経営者は経営施策の効果を事前に知りたいばかりでなく、事後でもパフォーマンスアップの結果を知りたいものであります。
  そこで、実際のグローバル経営の各プロセスに必要な経営理論要素と経営工学的技法のマップ化作業を行い、価値を生成する経営行動をプロセスモデルによって記述して、経営の高度化による企業行動のプロセスをシミュレートするビジネスシミュレータを構築することが、科学的経営をデザインするためには必要となります。ここでは、知の体系として、経営学諸領域や経営工学諸領域を俯瞰、統合する情報循環的な視点を基にして、情報学、数理科学、統計科学、経営工学分野と、経営学分野の知の統合が行われることになります。
  このような大がかりなビジネスシミュレータの構築推進には、図に示すような横断型科学技術の基盤を持つ横幹連合をベースにした、異分野融合を促す組織が必要であると考えられます。即ち、横幹的アプローチに最適なテーマであると思われるのです。 経営の高度化は、広大な構想でありますから、一度に経営全般のシミュレータを構築できるわけではなく、経営価値の認識、経営価値のデザイン、経営価値の実装を個々に検討する必要があります。そこで、総合シンポジウムで発表が行われたような個々のグループに分かれた活動を行っているのです。

経営高度化の研究構成図
 
図:経営高度化の研究構成図(統計数理研究所椿教授より提供)

  その中で、私は(先に記した)経営高度化1と4に深く関わっています。特に、次世代業績評価法と意思決定に関しては、環境変化の振れが大きく、更に短サイクルになってきたクラウド時代の経営において、多様化する顧客ニーズに対して、オンデマンドかつロバストに対応して企業の成長を維持して行く必要があります。そこでは、経営状態をリアルタイムに把握し、高精度な収益予測、動的CVP分析(注1)、個別採算シミュレーション、個別経営施策のリアルタイムな効果測定・評価など、短時間のうちに高度な経営判断を行う必要が求められています。クラウドコンピューティング技術は企業の膨大なリアルタイムの活動情報を迅速に処理できますので、この環境が活用できる時代になっては来ましたが、まだクラウドの分・秒単位のデータを経営に有効活用する次世代のための仕組みはできていません。そこで、リアルタイムの企業活動データを収集し、これを活用することによって、時間をベースにコスト・収益・資産を評価する、クラウド時代の新しい企業業績評価システムの研究を行っているのです。
  グローバル化、情報化が進んだ現在、経営工学分野と経営学分野の知を統合し、将来を見据えた科学的経営をデザインするための必要な知の体系について研究を進めるためには、経営学諸領域、経営工学諸領域を俯瞰・統合する情報循環的視点を基に構築する必要があります。そこで、横幹的アプローチとして、知の統合のため、会計学、流動数管理、経営学(特にBSC)(注2)のメンバーを横幹連合参加学会より人選して、ビジネスシミュレータの研究にあたっているところです。

(注1) 動的CVP分析:CVP分析(Cost-Volume-Profit Analysis)は、損益分岐点分析のこと。コストの期待値を変動費と固定費に分けて、(将来の不確実性については標準偏差に従うと考えて)利益が出始める売上高を求める管理会計の分析手法である。しかし、伝統的な損益分岐分析が、基本的には静的モデルであったのに対し、動的なCVP分析として、基本的変数に時間を導入して、変数が時間の経過でどのように変動するかを分析する手法などの、いくつかの分析の試みが近年提案されている。
(注2) BSC(Balanced Scorecard):企業業績を評価するための手法の一つ。ここでは「企業財務の視点」「顧客に対する行動の視点」「業務プロセスの視点」「企業ビジョンを達成するための学習と成長の視点」の夫々についての評価尺度を定め、それらについてのスコアカード(点数の記録簿)をつけること。BSCを準備しておくことで、経営者は、自身が定めた戦略目標について、それがどれだけ達成されているかを、その遂行の過程で客観視できるとされている。

(注釈の文責は、編集室)   
 

 

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