【協力】 松浦 執様 (形の科学会事務局長) 横幹連合 広報・出版委員会 * * * ■横幹連合 ニュースレター編集室■ 武田 博直室長(VRコンサルタント、日本バーチャルリアリティ学会) 高橋 正人委員(情報通信研究機構、計測自動制御学会) 小山 慎哉委員(函館工業高等専門学校、日本バーチャルリアリティ学会) 中田 亨委員(産業技術総合研究所、ヒューマンインタフェース学会) 河村 隆委員(信州大学、日本ロボット学会) ■ウェブ頁レイアウト■ 中野 悠紀委員(お茶の水女子大学) |
横幹連合ニュースレター
<<目次>> No.034 Aug 2013 |
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巻頭メッセージ |
活動紹介 |
参加学会の横顔 |
横幹的アプローチ:雑感 * 玉置 久 横幹連合理事 神戸大学 大学院システム情報学研究科 教授 |
第37回横幹技術フォーラム |
【横幹連合に参加している 学会をご紹介するコーナー】 ◆形の科学会 |
イベント紹介 |
ご意見はこちらへ |
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◆2013年度 第5回横幹連合コンファレンス ◆これまでのイベント開催記録 |
ニュースレターへの ご意見・ご感想を お聞かせください。 * E-mail: |
巻頭メッセージ
横幹的アプローチ:雑感
玉置 久 横幹連合理事
神戸大学 大学院システム情報学研究科 教授
横幹連合の理事の末席に加わらせて頂き、4年目を迎えました。今年度は、会誌編集委員長を拝命しております。会誌「横幹」では、横幹連合の10周年を記念して、今年度(第7巻)に特別企画を組ませて貰っています。まず、4月に発刊された第1号では、内閣府総合科学技術会議の議員の立場から横幹連合の活動を支援して下さった皆様、ならびに、歴代会長の先生方からご寄稿をいただきました。あらためて横幹連合の設立・活動に対する熱い思いや、期待を感じていただけたのではないでしょうか。また、10月発刊予定の第2号では、副会長ご経験の先生方にご寄稿いただいております。今後もミニ特集テーマの選定やタイムリーな企画など、紙面の充実に努める所存です。会員学会の皆様からも、忌憚のないご意見をいただければ幸いです。
さて、話題は会誌から離れますが、会誌編集委員長の就任を機に、横幹連合の活動趣旨について下名なりに改めて思いを巡らせてみました。これまでにも、長野宣言(コトつくり長野宣言、2005)や京都宣言(コトつくりによるイノベーションの推進、2007)など、「コトつくり」をキャッチフレーズに、横幹連合のスローガンである「知の統合」に向けて、独自の取り組み・活動が展開されて来ているところであります。しかしながら、学会連合という形態や、「コト」(機能)や「統合知」を対象とすることなどにより、横幹連合は、その捉えどころが難しい、あるいは、内容が見えにくいというあたりが、共通の悩みであり難点ではないでしょうか。私自身、まだまだ理解・消化しきれていない部分が多々ありますが、この場をお借りして、これらについての個人的な解釈・期待を綴らせていただきます。思い付くままの雑多なもので、恐縮ではあるのですが。
まず、「コトつくり」に関連して。モノ(対象)とコト(機能)との対比は、ある意味では「静」と「動」といった見方もできるかと思います。これは、昨今の、大規模化/高集積化、さらに複雑化するシステムを扱うといった場合には、極めて重要な切り口であると思われます。例えば、3.11の福島第一原子力発電所事故以降に、レジリエンス・エンジニアリングの分野(システムの復元力や耐久力に関する工学)が、特に注目されるようになりました。そこでは、「単に外乱があった際に反応して、回復するという能力だけではなく、その機能を継続する能力、さらには、想定されていなかった範囲の事象までを含む多様な条件の下で、その機能を継続できる能力」が強調されており、つまり、「そのシステムの有するモノが重要なのではなく、システムのなすコトが重要」という認識が重要視されていることにも通じるものがあるのではないでしょうか。また、話は飛躍しますが、問題や課題を解決する際の「質」(quality)についての議論では、「創造性」(creativity)が欠かせないものの一つとして挙げられます。特に、人間や社会を内包するシステムが対象である場合には、動的で、創発的なプロセスが肝要です。創造性は、人間のみが固有に持つ能力であるとも言われていますが、課題解決の場では、その創造性を、システム論的に解釈・理解・実現する「コトつくり」が不可避であるように思えます。これまでにも玉石混淆、種々のアプローチが考えられておりますが、効率のみを追求するプロセスに、創造性はありません。いわゆる冗長性が、創造性を支えているのです。こじつけのような感は否めませんが、横幹連合が標榜する「コトつくり」においても、同様のことが言えるのではないでしょうか。もちろん、真に有効・有用なアプローチを展開することが第一義であることは、言うまでもありませんが。
次に、「知の統合」に関連して。知の統合を、新しい知(統合知)の創成や、知を利用するための知の確立と考えたときに、そもそも「知の統合」に向けた一般的・汎用的なアプローチといったものが考えられるのでしょうか。直感的には、(1)個別システム(個別の課題)に、徹底的・具体的に対応して、知の統合によるコトつくりを図る、あるいは、(2)統合のためのベース(スタンス)を選定するなり、核となる横幹要素技術を固定して、その上で、統合化された横幹的方法論を構成する、といったアプローチが現実的かと思われます。蛇足ではありますが、私が大学で所属する専攻(大学院工学研究科 情報知能学)は、「『情報』を媒体として既存の諸工学分野を有機的に結合し、『知能』による創造的プロセスを追求するとともに、次世代の『知能』化情報システムを創出する学問領域」と概要にまとめられています。横幹に直接関係するか否かについては、心もとないところもありますし、まさに絵に描いた餅になりかねない内容ではありますが、このようなスタンス/アプローチも、あるのではなかろうかと感じています。話を戻しますと、個別のテーマを選定して徹底的に問題解決を試みるか、何かを核にして徹底的に方法論を検討するか(この場合にもベンチマーク的な課題の選定は必要になるかも知れませんが)といった具体的なトライアルが、喫緊の課題であり,いずれも試みる価値が十分にあるのではないでしょうか。前者は、横幹技術協議会との密接かつ実質的な連携が一つのポイントとなるでしょうし、後者は、学としての横幹連合の知恵の出しどころではないだろうかと思います。
以上、思いつくままに雑感を書かせていただきました。いずれにしましても、システム屋に対してしばしば浴びせられる批判(「結局は役に立たない」、「NATO、No Action, Talk Only」など)が、間違っても横幹連合の活動に向けられることのないように、10周年を迎えた今、あらためて設立趣旨の再認識、ならびに活動方針の(必要に応じた)見直しが肝要かと思います。会員学会(の会員の皆さま)が主体的・積極的に関与していただけるような場を作ることも、有効かもしれません。そして、このような活動を通じて横幹連合がますます発展し、横幹的課題・横幹的アプローチが、社会政策や提言に中核として組み込まれることを願っています。
さらには、このような発展的な活動の紹介・報告が会誌「横幹」の誌面を賑わすことを、期待してやみません。