横断型基幹科学技術研究団体連合
Transdisciplinary Federation of Science and Technology
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NEWS LETTER
VOL.002 July 2004
<<目次>>

◆巻頭メッセージ
・「2年目を迎えて」

◆活動報告
・2004年度総会
・特別報告講演:
・【特別報告講演】
 「技術者と知的財産権問題」
・「横断型科学技術の役割とその推進」シンポジウム報告

◆特別講演要旨
「学際的なダ・ヴィンチ科学へ向けて── 顔学からのアプローチ ──」
・「新産業の創出と基盤技術」

◆参加学会の横顔
・経営情報学会
・日本統計学会

・日本ロボット学会

◆イベント紹介
「横幹連合とWSTST'05 について」

◆編集後記
 

NEWS LETTER No.002, July 2004
◆イベント紹介
 
横断型基幹科学技術研究団体連合とThe Fourth Internatioal Workshop on Soft Computing as Transdiciplinary Science and Technology(WSTST'05)について

土手康彦(室蘭工業大学)

1. 横断型科学技術の重要性[1][2]

●WSTST'05
(The Fourth Internatioal Workshop on Soft Computing as Transdiciplinary Science and Technology)
日時:2005年5月25日~27日
会場:北海道・室蘭
※投稿論文の締め切りは2004年10月1日です。
ホームページはこちらです。
(ミラーサイトはこちら
 大学の工学部で教えられている学科目は多種多様であるが、基礎的な科目に限ると次の二種類に大別される。ひとつは主として自然科学に基礎をもつ、対応する基礎的な科目が理学部に設けられているような学科目である。たとえば、電磁気学、音響学、材料力学、工業熱力学、化学反応論などである。もうひとつは自然科学を基礎とせず理学部に対応する科目がない学科目である。情報学、モデル学、制御工学(信号処理論)、設計学、システム論、認知科学、工業倫理などである。前者は自然科学の応用の側面が強いので応用工学とよぶことにする。応用工学は自然が持つ可能性を人間の側に獲得するものであり、技術が自然に向かってその外延を広げるものである。後者は技術が工学の中で閉じているので純粋工学とよぶことにする。また、純粋工学は人間が作り出したさまざまのモノ(人工物)の価値を高めて社会にもっともな有意義な形で還元することで、技術の内包を高めるものである。前者は垂直型であり、後者は横断型である。日本では今まで、垂直型を中心に考えてきた。横断型の工学とは次の3つの条件を満足する工学である。
  1. 数多くの垂直型の分野と共通の対象を持ち、そこから普遍性を抽出している
  2. 独立した理論の体系をもつ
  3. 自然科学に基礎をもたない
 横断型の研究者がアイデンティティを持ちそのひとつを鍛えるための研究組織があり、垂直型の研究者と共同研究すると研究のいっそうの成果が期待できるのである。

2. ソフトコンピューティングとは

 ソフトコンピューティングは1991年 BISC (The Berkeley Initiative in Soft Computing)が設立されたとき、研究所長であるL.A.Zadehによって提案されたものである。ファジィ論理、ニューラルネットワーク、遺伝アルゴリズム、学習理論を使用したハイブリットシステムで、Tractability, Machine Intelligence Quotient, Low cost (Robust)をめざした新しいコンピューティングである。ソフトコンピューティングは21世紀の科学技術においてパラダイムシフトをおこすと期待されている。
 過去3回、(1993年、1996年、1999年)室蘭にてL. A. ZadehをPlenary Speakerに迎えてソフトコンピューティングの工業応用についての国際ワークショップを開催してきた。[12][13][14] 第1回目はファジィ論理とニューラネットワークのハイブリットシステムに、第2回目は遺伝アルゴリズム、カオスコンピューティング、免疫ネットワークに、第3回目はCognitive and Reactive Distributed Artificial Intelligenceに重点をおき議論してきた。これらのまとめとしてジャーナル[3]に発表した。
 ソフトコンピューティングは横断型基幹科学技術(情報学)であり、かつ、他の横断型基幹科学技術にも応用でき、それらのよりいっそうの発展した研究成果が期待できる。

3. The Fourth International Workshop on Soft Computing as Transdisciplinary Science and Technology (WSTST'05)のねらい

 今日、ソフトコンピューティングは発展し拡張され、ファジィシステム、ラフ集合理論、ニューラルネットワーク(学習理論を含む)、Evolutionary Computation、カオスコンピューティング、フラクタル理論、ウェーヴレット変換、免疫ネットワーク理論、Sugarscape Model, DNAコンピューティングなどのハイブリットシステムで新しい計算機能が追求されている。
 これを、Zadeh[10]とFogel[11]のインテリジェンスの定義の視点から整理すると、

Zadehのインテリジェンス:
1. 人間の情報処理法を考える
2. Cognitive Distributed Artificial Intelligenceである
3. 現在のコンピュータが不得意としている情報処理法である
4. 人間の情報処理法の研究は脳や心理学の研究の進歩とともに進歩していて、ペットロボットを例にとり説明すると、環境とセンサとアクチュエータでPerceptionとMotionを同時に行いパターンを抽出する、その後パターンをイメージ(記号(言語)の内容)化し処理系で記号化(言語化)する[4][8]
また、イメージ化までの処理は人間の脳の発達の過程で行われてきたとし、現在、感性情報処理として、その研究が盛んに行われている[5][9]
5. 確率論がそのまま使用できずファジィ論理が有効である
Fogelのインテリジェンス:
1. 生物の生きる知恵から学ぶ
2. 確率論が基本である
3. 現在のコンピュータが比較的得意とする情報処理法である
4. ニューラルネットワーク、Evolutionary Computation、カオスコンピュティング、フラクタル理論、免疫ネットワーク理論、DNAコンピューティングなどがある
5. Reactive Distributed Artificial Intelligenceである

 本ワークショップでは、ZadehとFogelのハイブリットインテリジェントシステムを提案する。二つの重点テーマは、チャンス発見の情報技術(ポストデータマイニング時代の意志決定支援[6]と複雑系の研究に使用されているマルチエージェントシステム[7]である。重点応用テーマとして、今、注目を集めている環境、情報通信(インターネットモデリング)、バイオ、ナノその他である。
 Plenary Speakersとして、L.A.Zadeh、 R.R.Yager、A.Satyadas、この分野での独創的な情報処理技術を世界に発信されておられる先生方、古橋 武、高木英行、大澤幸生、大内 東を予定している。
 1990年にIEEE Neural Network Councilで初めて使用された用語”Computational Intelligence”はSoft Computing + Numerical Processing と同じもである。[14]

 WSTST'05のホームページのURLは
   http://wstst05.softcomputing.net/
 ミラーサイトのURLは
   http://bank.csse.muroran-it.ac.jp/~wstst05/wstst05.html
であります。
 このワークショップが横断型基幹科学技術の発展に役立つよう願って皆様のご参加のご案内を申し上げます。


<参考文献>

[1] 木村英紀、横断型研究開発の重要性、UP2002年3月号、東大出版会
[2] 木村英紀、横断型科学技術の重要性を主張する、週間エコノミスト、2002年5月21日号、毎日新聞社
[3] Y.Dote et al Editors, The Special Issue on Industrial Innovations Using Soft Computing with Zadeh's Foreword, Proceedings of the IEEE, vol.89, no.9, September, 2001.
[4] T.Furuhashi, "Fusion of Fuzzy/Neuro/Evolutionary Computing for Knowledge Acquisition", The Special Issue on Industrial Innovations Using Soft Computing with Zadeh's Foreword, Proceedings of the IEEE, vol.89, no.9, September, 2001, pp1266-1274.
[5] H.Takagi, "Interactive Evolutionary Computation-Fusion of the Capabilities of EC Optimization and Human Evaluation", The Special Issue on Industrial Innovations Using Soft Computing with Zadeh's Foreword, Proceedings of the IEEE, vol.89, no.9, September 2001, pp1275-1296.
[6] 大澤幸生 監修・編集、チャンス発見の情報技術(ポストデータマイニング時代の意志決定支援)、東京電機大学出版局、2003年
[7] 大内、東、他著、マルチエージェントシステムの基礎と応用──複雑系工学の計算パラダイム、コロナ社、2002年
[8] 古橋 武、荻原将文編(電気学会)、パターン・記号統合 ──基礎と応用── ペットロボットのペットらしさを求めて、丸善、2003年
[9] 辻 三郎 編、感性の科学──感性情報処理へのアプローチ、サイエンス社、1996年
[10] L.A.Zadeh, Plenary Talk, "Computing with Words and Perceptions ― A Paradigm Shift in Computing and Decision Analysis", The IEEEE Systems, Man, and Cybernetics Conference, Washington D.C.,U.S.A., Oct.5-8, 2003.
[11] D.B.Fogel, Plenary Talk, "Hybrid Computational Intelligence with Evolutionary Computation and Object Neural Networks", The Hybrid Intelligent Systems Conference, Melbourne, Australia, Dec.14-17, 2003.
[12] L.A.Zadeh, Plenary Talk, "Fuzzy Logic, Neural Networks and Soft Computing", Proceedings of the IEEE Int. Workshop on Neuro-Fuzzy Control, Muroran, Japan, 1993, PP1.
[13] L.A.Zadeh, Plenary Talk, "The Role of Soft Computing and Fuzzy Logic in the Conception, Design and Development of Intelligent Systems", Proceedings of the IEEE Int. Workshop on Soft Computing in Industry, Muroran, Japan, 1996, pp136-137.
[14 L.A.Zadeh, Plenary Talk, "From Computing with Numbers to Computing with Words ― From Manipulation of Measurements to Manipulation of Perceptions", Proceedings of the IEEE Int. Workshop on Soft Computing in Industry", Muroran, Japan, 1999, pp221-222.


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